【前編記事「9条とかどうでもいいけど大半の日本人は憲法が何かを知らない【前編】」はこちら】
国の思うがまま運用可能な憲法へ
では自民党は、いったいどのように日本国憲法を改正しようとしているのでしょうか?
一般に話題とされるのは、憲法第9条を改正して、自衛隊を国防軍にしようとしていることですが、そんなことは問題ではありません。そもそも自衛隊なんて、明らかな軍隊ですし、そんなものを自衛隊と詐欺のような名称で誤魔化したところで仕方がありません。むしろ国防軍とかせせこましい名前をやめて、日本陸軍と海軍と空軍にすべきです。それくらいしないと日本の国土を脅かそうとしている韓国や中国の脅威から、国民の国土と財産、生命を守ることは不可能です。
しかし自民党は、表向きに9条を改憲の争点にすることで、憲法改正の本当の狙いを巧妙に誤魔化しています。では実際に自民党は、憲法をどのように権力者にとって都合良く変えようとしているのでしょうか?
昨年4月に出された自民党の「日本国憲法改正草案」から検証していきたいと思います。先ほどから何度も言っているように民主主義国家の憲法は、本来国家権力を拘束し、国民に危害を与えないために存在します。しかし自民党の改正草案では、それがまったく180度逆になっているのです。まず現行憲法の対象はこう規定されています。
〈第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。〉
このように憲法の規制対象に国民は入っておらず、きちんと権力者を縛るものになっています。それに対して、自民党草案のこれにあたる条文には〈全て国民は、この憲法を尊重しなければならない〉と書かれています。憲法で国民の言動を制限しようというのです。これでは、近代民主主義国家の憲法ではありません。まるで専制国家の憲法です。
他にも自民党草案は、問題だらけです。日本国憲法第13条には、こう書かれています。
〈すべて国民は、個人として尊重される〉
ところが草案では、〈すべて国民は、人として尊重される〉と巧妙に、「個人」が「人」に置き換えられ、国民を個人と認めず、ただ大ざっぱに「人」と括り、「個人が尊重される」ことはなくなります。しかも、その人権には、〈公益及び公の秩序に反しない限り〉という条件まで付けられている有様です。つまり「公益」や「公の秩序」に反すると権力者が見なせば、もはや「言論や出版の自由」さえも認められません。しかも「公益」や「公の秩序」というあまりにも曖昧な概念が一旦まかり通ってしまえば、権力者サイドはいくらでもそれを恣意的に運用することが可能なのです。この条文によって、無辜の民をいくらでも、犯罪者に仕立て上げることが可能な暗黒時代がやってくるに違いありません。
自民党改正草案は憲法ですらない
他にも第18条から〈何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない〉の部分を削除し、徴兵制の復活を臭わせたり、「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律に定める緊急事態」が起きた時に、内閣総理大臣が「緊急事態の宣言」をすることができるとされるという戦争状態を想定した新しい項目が追加(安倍首相は、よほど戦争がやりたいらしい)されたりと、突っ込みどころが満載の自民党草案ですが、やはり大問題なのは、憲法でありながら規制の対象を国家権力から国民にすり替えたことに他なりません。否、そもそも近代国家の巨大な権力を拘束し、国家権力から国民を守るためのものが憲法だとすれば、自民党の改正草案をそのまま適用したものは、もはや憲法の要件すら満たしていません。
別に改憲に賛成しようが、反対しようが、一向に構いませんが、自民党がやろうとしていることは、国家権力を縛る唯一の国民の武器「憲法」を国民から取り上げようとしている行為に他なりません。本当にそれでいいのですか?
このまま無知蒙昧のままでいたら、大切な武器を取り上げられて、専制国家の国民になって、「安倍マンセー」とか叫びながらマスゲームです。とは言え、それはそれで北朝鮮みたいで楽しいかもしれませんね!
【前編記事「9条とかどうでもいいけど大半の日本人は憲法が何かを知らない【前編】」はこちら】
文/亀井S
初出/実話BUNKAタブー2013年8月号(※一部修正済み)