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米山隆一衆議院議員が解説する高市大臣の放送法文書問題:米山隆一連載1

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『実話BUNKA超タブー』誌で衆議院議員米山隆一氏の連載がスタート。こちらにも日を置いて、連載原稿をアップさせていただきます。初回のテーマは高市早苗議員と総務省の文書をめぐる問題に関して。色々あってこの問題ウヤムヤになってしまいましたが、高市議員がおかしな答弁をしていたこと自体はまったくの事実であり、米山議員にこの騒動を解説していただきました。※本原稿は3月下旬執筆のものです。

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問題の文書は総務省官僚が作った真っ当な行政文書

3月2日に立憲民主党の小西洋之議員が記者会見で公表した衝撃の「放送法の『政治的公平』の解釈を巡る78頁の文書」は、3月22日に総務省が「文書の捏造はなかった」という最終調査報告書をまとめ、「文書の真偽(内容が真実という意味ではなく文書が本物という意味において)」については決着がつきました。この間、小西議員と高市大臣の国会論戦のみならず、SNSや「論客」「論者」、そしてマスコミまで様々な論争がなされましたので、解説したいと思います。

まずもって、知事として多数の行政文書を見たことがある私から見て、この文書は一見して、総務省官僚が作った真っ当な行政文書でした。一つ一つでは日付や作成者が不明確なものもありますが、全体に当時の磯崎補佐官と総務省、安倍元総理周辺とのやり取りが非常に生々しく記載され、それは現実に起こったこと――国会の質疑・答弁等と一致し何処にも矛盾がありません。又、資料配布先には複数の官僚の名前が記載されており、多くの人の目に触れていて、事後的に改竄することはほぼ不可能であろうことが推測されました。

ところがこれだけ確からしい(そして実際本物だった)文書を、高市大臣がいきなり初見で「捏造だ!」と言い切り、小西議員が「捏造でなかったら辞任するのか?」と問うたら、「それで結構だ!」と断言したのにはぶっ飛びました。それだけなら高市大臣の軽挙妄動で済む話ですが、そこに高橋洋一氏や、池田信夫氏と言ったいつもの「右派論客」が「偽造だ!」「捏造だ!」と言い張ったばかりか「小西議員は明日にも国家公務員法で逮捕される!」という常識的にはあり得ないトンデモ論までも主張しだしたのはまだご愛敬(?)として、政権寄りなりに経験も常識もあるはずの松井孝治慶応大学教授(元通産官僚)や玉井克哉東大教授が流石に断定はしないものの「捏造」の可能性を示唆したことには、率直に言って「日本の盲信的野党批判・政権擁護もここまで来たか…」という思いを禁じ得ませんでした。

「都合のいい理屈」を信じ「不都合な真実」を無視

その一方で、この文書の中身――「放送法の『政治的公平』は『極端な場合を除き』一つの番組ではなく放送全体を見て判断する」という1964年の総務省の解釈が、磯崎補佐官の執拗かつ高圧的で恫喝も交えた働きかけで、一見従来の解釈を守っている体を装いながら、『極端な場合』が、現実には中々在り得ないような、従ってほぼ想定しなくていいような物から、真綿で首を絞めるように、『サンデーモーニング』のような具体的な番組でもあり得そうな内容に変更され、当時の総務省の幹部や、官邸の山田真貴子秘書官、今井尚哉秘書官らが最後まで懸念を表明したにもかかわらず最終的に安倍総理の決定で、自民党議員と高市大臣の質疑・答弁のシナリオが書かれ、そして2015年5月12日の参院総務委員会でシナリオ通りに解釈変更がなされたという事実は、さほど多くの注目を浴びることはなくスルーされ続けました。それ以前に、この15年の解釈変更は、官邸や総務省が懸念していた「マスコミからの反発」を殆ど一切受けることなく、今に至っていたのです。

この全過程から浮かび上がるのは、今の日本が、SNSから「論客」「識者」、そしてマスコミに至るまで、「眼前に証拠を示されて尚、政府・政権に『都合のいい理屈』を信じ込む一方で、そこに顕れている『不都合な真実』を無視する風潮」にどっぷりとつかってしまっていることではないかと私は思います。

権力と強弁で「都合のいい理屈」を言い張ることはできても、言い張ったからといって、「事実」が変わる訳ではありませんし、その権力は権力の外――日本国外には通用しません。私たちが、無視してきた「不都合な真実」に復讐される日は、遠くないのかもしれません。

文/米山隆一
初出/実話BUNKA超タブー2023年5月号

米山隆一

PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて新潟5区で初当選。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama

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