第479回 DJ SODAさんの騒動を決めつけで語る人が多くてうんざり
8月14日、インフルエンサーとしても知られる韓国出身のアーティスト・DJ SODAが、前日に出演した大阪府泉南市で行われた音楽フェス『MUSIC CIRCUS’23』の公演中、一部の観客から胸を触られる被害にあったことを告白し、「DJをしてから10年経ちますが公演中にこんなことをされたことは人生で初めてです」とツイート(「Twitter」が「X」に変わろうと、アタシ、しばらくこの表現で通すわよ! イーロン・マスクめ、本当に余計なことしやがって……)したというニュース、みなさんはご存じかしら?
これに対し、ネットやSNSでは、胸を触った人に対し、「許されるべきではない」「日本の恥」といった非難の声が上がる一方で、普段から奇抜なファッションを好み、この日も露出の多い恰好をしていたDJ SODAに対し、「あんな服装をして客席に近づけば、こうした被害に遭うのも仕方ない」という意見や、「反日感情を煽るために騒いでいるんじゃないか」という意見、「セキュリティが甘すぎるのでは?」という意見も。
昔から、痴漢やレイプの被害者が、世間から「被害を受けたほうにも隙があったんじゃないか」的な言葉を投げつけられて、さらに傷つけられるという話をよく耳にするけど、21世紀も4分の1を過ぎて、まだ「被害者も悪い」みたいなことを、平気で全世界発信できてしまう人がいることにびっくりよ……。
あと、最近のSNSやネットの、何らかの事件や問題に対する書き込みを見ていると、「丁寧に分けて考えることができていないな」「因果関係がめちゃくちゃだな」「主語が大きいな」と感じることが多いわ。今回の件にしても、今の社会に「相手の許可なく、胸や局部などをみだりに触ってはいけない」という共通認識がある以上、露出の多い恰好をしていようと、ファンサービスのために客席に近づこうと、セキュリティが甘かろうと、DJ SODAがよその国で同じような被害に遭っていようといまいと、日本にどんな感情を持っている人であろうと、やはり触ってはダメであることに変わりはないのよ……。
と同時に、こういうことがあったからといって「日本の恥」「だから日本の男は」などというのも主語が大きすぎると思うわ。今回の件はあくまでも、胸を触った人たちが問題なのであって、それをすぐに何らかの属性と結びつけて語るのは、差別や偏見、争いのもとにしかならないのよね。
いたずらに対立や分断を煽ろうとする人も少なくない昨今、「目に入った情報にすぐとびつかないこと」「人が言ったことを拡大解釈したり、言ってもいないことを妄想したりして腹を立てないこと」「なんでもかんでも乱暴に括って論じないこと」はすごく大事だとアタシは思うわ。
<水曜日掲載>
写真/Wikipediaより(撮影/Frostkd)
PROFILE:
エスムラルダ(えすむらるだ)
1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。」(ポット出版、共著)
twitter:@esmralda001