380回 エプスタインの事件と「エプスタイン陰謀論」にモヤモヤ
児童に対する性的暴行や人身売買などの容疑で逮捕され有罪になった後、拘置所内で死亡したアメリカの大富豪ジェフリー・エプスタインに関する捜査資料「エプスタイン文書」。アメリカ司法省が今年の1月に大量の資料を新たに公開して以降、世界各地で要人が刑事捜査を受けたり、辞任したりする事態が発生している。この中にはフランスのジャック・ラング元文化相、イギリスのアンドリュー元王子、ゴールドマン・サックスの最高法務責任者キャスリン・ルムラー氏などが含まれている。
また、元アメリカ大統領・ビル・クリントン氏も妻のヒラリー氏と共に米連邦議会で証言を行うことが予定されている。
アメリカのニューメキシコ州議会下院はエプスタインが同州に所有していた牧場を調査するための特別委員会を設立することを承認。
ここから新たなエプスタインの犯罪の証拠が発見されるかどうか、注目が集まっている。
非常に重大な犯罪行為であり、全体像の判明が望まれるわけだが、主犯であるエプスタインが既に死亡していること、エプスタインが生前から謎の多い人物であり以前から様々な噂がささやかれていたこと、政財界の大物が関係者の名前にあがっていることから彼らの捜査への介入があったのではないかという疑惑が生じることで憶測がすすみやすい条件が整っており、エプスタイン事件に関する陰謀論が絶えない状況にある。それはアメリカ大統領選を動かすまでのものになっている。
「エプスタインが児童に対する性的虐待や児童買春、人身売買に手をそめていたのは事実であり陰謀論とはとんでもない!」という人もいるかもしれない。それは確かに現在のところ判明したとされている事実であるが、「陰謀論」とはそれを指したものではない。
捜査資料、裁判資料、電子メールの記録などといった莫大な資料の断片を切り貼りして隙間を憶測・妄想で埋めることで勝手に引き出された物語、例えば世界中の政財界のエリート・王家を結ぶ悪魔崇拝主義者による小児性愛ネットワークが存在し、それが世界を裏で牛耳っているというようなものである。ディープステート陰謀論と連結されているものだ。
例えば「エプスタイン文書」には大量の人名が登場し、その中には多数の世界の要人の名前もある。しかし、名前のあがっている人間の全てがエプスタインの犯罪に関わっているというわけではない。
彼と密接な交流があったと思しき人物もいれば、単になにかの機会に面識があっただけの人物、資産運用などビジネス上の関係があるだけの人物、単にエプスタインへ送った文書で名前を出されただけの人物もいる。
エプスタインには大富豪という表の顔があったわけで、その部分で直接・間接問わず何らかの接点を持った人は大量にいるだろうし、他者と彼とのやり取りの中で名前が出ただけの人物もいる。「エプスタイン文書」に登場する人名というのは、そういうもの全部ひっくるめたものだ。
