いくらなんでもそりゃ困るだろうということで、私が衆議院の法務委員会で、
「性交渉というのは実は多様です。それは16歳のロミオが14歳のジュリエットと初めて一夜を共にしたとき、ロミオは、『ロミオ様、貴方は何故ロミオなの?』と問うジュリエットの指一本触るにも『触っていい?』と聞いて了解を取ったと思いますし、それが在るべき姿だと思います。一方で、仮にロミオとジュリエットが死亡せず、一命をとりとめて無事結婚して30年が経ち、少し髪の毛が薄くなってお腹の出た46歳のロミオが、ワインを飲んで『おいロミオ、あんた何でロミオ何だい?』とか言っている44歳のジュリエットを、なんとなくな感じでベッドに誘うことだってある訳です。そういうのは不同意性交罪に当たりませんよね?」
と質問したところ、法務省刑事局長(法務省の偉い人)が
「お酒に酔ったことで例えば気分が開放的になったといたしましても、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであるのであれば、性的行為をするかどうかの判断、選択のきっかけや能力があり、同意しないという発想もできたのでありますから、同意しない意思を形成することが困難な状態には該当しないのかなと思います」
と、ご答弁されました。
つまりはこの条文に言う「困難」は「ちょっと頭が回らない」くらいではなく、「同意しないという発想すらできない」、泥酔とは言わないまでも結構「酔っぱらい」な状態(そんな時は46歳のロミオもジュリエットを優しく介抱するはずです)を指し、そこに至らない状態なら犯罪に該当もせず、逮捕もされないということです。この答弁は法律ではありませんが警察の行政運営の一定の指針になりますから、皆さん、まずは一安心です。
「性交渉」については近事性犯罪被害者保護の観点から様々な法制度が整備されています。それ自体は勿論必要かつ有用なことですが、一方で性交渉は多様で、犯罪の正反対の、人生の幸福の源となる、恋人間の性交渉、夫婦間の性交渉も勿論あり、数の上ではこちらの方が圧倒的多数です。性交渉についての法整備において、そういう「幸福な性交渉」を阻害しない配慮も必要不可欠であると、私は思います。
ということで、野党議員、意外に皆さんの幸福を守るために頑張っております(この質疑は、長岡の金髪のジュリエットにも褒められました――笑)。
文/米山隆一
初出/実話BUNKA超タブー2023年7月号
PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて新潟5区で初当選。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama