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陰謀論をはびこらせたSNSという言論の場:米山隆一連載13

連載
昨今の陰謀論者の攻撃の対象となっている財務省。
連載社会
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ひと昔前の陰謀論といえば、せいぜいごく一部の好事家から半分本気半分冗談で親しまれているものに過ぎませんでしたが、SNSで拡散力が飛躍的に高まった現在、状況は一変。米山隆一衆議院議員が、陰謀論を蔓延させているSNSという言論の場について論じます。

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第13回:陰謀論をはびこらせたSNSという言論の場

今、陰謀論が吹き荒れています。有名なところでは、ワクチンは人口を減らすための生物兵器だなどとする「ワクチン陰謀論」、「財務省は財政均衡至上主義で増税すると出世できるから、本当は国債を出せるのに国債を出さずに増税して意図的に国民を苦しめている」という最近特に注目を引いている「ザイム真理教」という名の「財務省陰謀論」などがあります。

 読者の中にもこれらの説を信じている方もおられるのかもしれませんが、普通に考えて天然痘ワクチンによる天然痘の撲滅を筆頭に、ワクチンは人類を様々な感染症から救い、むしろ飛躍的な人口増に資してきたのであり、荒唐無稽以外の何物でもありません。「ザイム真理教」についても、大学教授のような世間から見て知的と考えられている職業の方の中にまで信じ込んでいる方がいて驚きますが、基本的にこの説で主張されているのは、極めて初歩的なマクロ経済学、財政・金融実務についての誤解・無理解に基づくもので、「デタラメ」と言って過言でないどころか「デタラメ」そのものです。

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 ではなぜ、このような荒唐無稽な陰謀論が、これ程はびこるのでしょうか? その原因はほぼ明白にXなどのSNSやYouTubeなどだと思われます。私自身SNSを良く使い、これが、個人が多くの人に主張を伝えられる極めて便利なツールであることに異論はありません。しかし、それと表裏一体に、SNSは人類社会において有史以来初めて、「発言権というものが消失した言論の場」を登場させたのではないかと思います。

 今「オールドメディア」と揶揄されているマスコミにおいては、これを通じて意見を表明することができる人は、当然マスコミにアクセスできる人に限られていました。マスコミ成立以前―おそらく江戸時代以前には、社会の意思決定に携われる人は、より一層限られていました。そしてそういう世界では、江戸城の幕閣会議から井戸端会議に至るまで、会議の参加者自体が限られ、参加者の中でも隠然とした「発言権」があって実質的な発言をできる人は限定され、それを無視して発言する人がいても「まあままそう言わずに」的なことを言われて修正されていたのだと思います。

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