辻田 プロパガンダを取り巻く環境は、この10年ぐらいで全く変わりました。10年前にプロパガンダの本(『たのしいプロパガンダ』イースト新書Q刊)を出した時は、「今更? もう古いよ」と言われたんですよ。少なくとも流行りではなかった。ところが今、SNSや生成AIが普及して、ウクライナ戦争などの情報戦にも使われるようになって、みんなプロパガンダの話をしてますよね。
――AIによるフェイクニュースの生成も問題になっていますね。
辻田 プロパガンダについて一つ言えるのは、それは大した効果は生んでいなかった、ということなんですね。つまりプロパガンダをみんな怖がるけど、歴史を知っている人間にとっては、プロパガンダがいかに失敗したかもよく知っている。だから、プロパガンダの効果には、そんなにビビりすぎてはいけないというのが、あの本で書いたことでした。ただ一方で、SNSやAIといった新しい技術と結びついたプロパガンダが、新しい事象として生まれている。これまでのプロパガンダは効率が悪かったんですが、いまはターゲティングによって、その人が興味を持っている事柄に、その人に向けてダイレクトにメッセージを届けることができる。それがどういう効果を実際に発生させるのか、興味がありますね。
――そういったターゲティングに〝取り込まれない”ようにするには?
辻田 極端な方向に連れていかれないように、やはり「健全な中間」にいるための構えが大事だと思います。自分はイデオロギーに染まってなくて、正しいと思うのではなく、絶対歪んでるし、偏っていると自覚した上で、できるだけまともな方向に行こうと不断に努力し続けることが、私の思う中間です。だから動画見て「お、新しい情報かも」と思うと同時に、「でもこれ間違ってるかもしれないな」というブレーキを持つために、様々な情報に触れるしかないでしょう。そして……SNSを見ない(笑)。それは冗談にしても、リアルでの交流も大事だと思います。SNSだと仲間で集まって外が全く聞こえなくなる、いわゆるエコーチェンバーという現象が起きますよね。
――それはリベラルでも保守でも両極で起こっていますね。
辻田 リベラル側では、自分たちと意見が違う人を「ネトウヨ」「冷笑」とラベリングして、仲間内で盛り上がっている。その上、左翼やリベラルは優等生が多いし、理屈としては一見正しかったりするから、上から目線だったり、「教えてあげる」という態度になりがち。それはやっぱり中間層からは嫌がられますよ。実際、いまは選挙の得票数や獲得議席などを見ても、リベラル側の票が減っているのが明らかになっていますよね。だからその態度を改めて、支持層を広げる努力をしないとリベラルの未来はすごく暗いと思いますよ。
――辻田さんのお話をうかがうと、辻田さんは左翼の人からは右翼、右翼の人からは左翼と捉えられるような気がしますが、実際はいかがですか?


