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港区女子はなぜ高級寿司を食べるのか:箕輪厚介「今月これに感謝」 連載10

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第10回 港区女子はなぜ高級寿司を食べるのか

2024年12月25日に幻冬舎から発売した前澤友作さんの『国民総株主』の編集を担当した。

前澤さんは昨年の2月に、多くの国民に資本主義市場にアクセスしてもらうための株式会社カブ&ピースを設立。それ以来、国民総株主の実現に取り組んでいる。

今回もその構想の一環で本を出してもらった。

『国民総株主』では、前澤さんがなぜ「カブアンド」というサービスをやろうと思った理由や、前澤さんの半生、考え方についても赤裸々に語ってもらっている。

実は、前澤さんの初の著作となるこの本は、企画から発売まで約2カ月ほどで出版に漕ぎつけた。あらゆるコンテンツがあっという間に発表される現代では遅く感じられるかもしれないが、出版の世界ではこのスケジュール感は異例で、最速に近い。なぜなら、市場流通を前提とした出版物は専門家による校閲が複数回入るために、どうしてもある程度時間がかかってしまうからだ。

僕は、本を作る時、なるべく先に目次を立てて、相手が語りやすいように質問することを心がけて作っている。本の方向性やテーマが定まっていない時は、雑談からインタビューに入る場合もあるが、その点、前澤さんの本はテーマが明確だから制作進行も非常にスムーズだった。けっして専門的な内容ではなく、中学生でも理解できるようなわかりやすい内容になっているので、多くの人に手に取って株式や資本主義について考えるきっかけにしてもらいたい。

【市長選に出る?】

年が明けた1月3日、ついXで、「4月、ある市長選に出ます」とポストしたら、正月早々ネットニュースの見出しを飾ってしまった。記念すべき、今年の1発目である。

しかも、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首から「なんか、箕輪くんだけ目立つの悔しいから、同じ市長選挙に立花孝志も立候補しよう!」と投稿されてしまい、自分が想像していた以上に話題になってしまった。政治的な話をすると、速攻でネットニュースにされるからポストするたびに後悔してしまう。とはいえ、思いつくとついポストしてしまうので、今後もこの手のネットニュースの発信源になってしまうのかな。

ポストしたきっかけは、最近よく足を運ぶ秩父で、地元の狩猟仲間の皆さんとジビエを食べていた時、ついつい「秩父を若い人たちで盛り上げたいよね」という話になったから。もちろん酒席で盛り上がった流れで飛び出した話なので冗談として捉えてもらいたい。

ただ、地方を若い人たちで盛り上げたいという気持ちを以前から持っているのは事実。瓢箪から駒じゃないけど、こんなふうに何かあるたびに出馬に言及していたら、どこかで真剣になる可能性もゼロではないかもね。

【高級寿司ブーム】

よく港区女子絡みの話で話題になりがちな高級寿司店。六本木にある「鮨さいとう」や、銀座の「鮨あらい」などが代表的だけれど、彼女たちが高級寿司店にステータスを感じてSNSなどで自慢してしまい、たびたび、炎上している背景には、明確な理由がある。

実は、高級ステーキ店や高級フレンチなどに比べると、高級寿司店はそもそも予約が取りにくい。1店舗あたり7席ほどで運営しているため、時間ごとに予約を区切ったとしても、1日あたり14人の客数しかいない。1人あたりの単価が高いから成り立つビジネスなのである。

その高級寿司店が希少価値を維持し続けているのには理由がある。絶えず予約でいっぱいにする仕組みがあるからだ。

高級寿司店はたいてい食事を終えた後に「次はいつ来ますか?」と言われて、半年後や1年後の予約を取る仕組みになっている。そうなると「たいていの人はとりあえず予約しておこうか」となるので、相当先まで予約が埋まる仕組みになっている。だから、一定の知名度や評判を獲得し、予約客を確保することができる高級寿司店はずっと埋まっていくことになる。

ちなみに来店時に「次の予約をいつにしますか?」と言われた際に、予約をしなかったらどうなるかといえば、この予約のサイクルから外れることになってしまう。そのため、たいていのお金持ちは、日本を長期的に空ける予定がない限り、とりあえず予約するという選択をしがちなのである。

この仕組みだから金額以上に希少価値が出て、高級寿司店で食事をすることは、港区女子のような人たちにとっては一種のステータスになり続ける。ポケモンカードのレアカードと一緒でつい自慢したくなる経験に昇華されやすいんだろうね。

もちろん彼女たちは身銭は切っていないから、高級寿司店の予約枠を持つような男性に奢ってもらっているという自慢にもなる。

よく北海道とか北陸まで富裕層がプライベートジェットで寿司を食べるために羽を伸ばしたりしてるけれど、そういうのも寿司以外では成り立ちにくい。どんなに美味いラーメンだとしても、基本は回転が早いから、多くの人が食べられるわけで自慢にはなりにくいのだ。お金だけでは得られない希少価値が港区女子たちの顕示欲を否応なく、くすぐるのだろう。高級寿司店に近いものといえば、高級ワインかな。ワインも希少性を競うから、いくらお金があっても、手に入らない場合がある。

一等地に立地する高級マンションなんかもそうだけれど、結局、買おうと思っても買えないということが一定の価値を生むんだろうね。ただ、僕自身はそれほど高級寿司店に価値を見いだせない。寿司が出てくる前のツマミの料理が多すぎて、お腹いっぱいになってしまうからだ。少し前までは、僕の周りの若い経営者たちも、高級寿司店を使っていたが最近はそれほど盛り上がっていない印象。結局、身銭を切らないブランド好きな港区女子たちが勝手に価値を感じて盛り上がっているだけなのかもしれないな。

 

初出/実話BUNKAタブー2025年3月号

PROFILE:
箕輪厚介(みのわ・こうすけ)
1985年東京都生まれ、早稲田大学卒。2010年双葉社に入社。広告営業などに携わった後、編集部へ。『たった一人の熱狂』見城徹/『逆転の仕事論』堀江貴文などを手がける。2015年幻冬舎に入社、書籍レーベル「NewsPicksBook」を立ち上げ、編集長に就任。『多動力』堀江貴文、『日本再興戦略』落合陽一、2019年に一番売れたビジネス書『メモの魔力』前田裕二など次々とベストセラーを手がける。自著『死ぬこと以外かすり傷』は14万部を突破。クラウドファンディングにて1000万円を集め、雑誌『サウナランド』創刊。様々なブランドとコラボレーションをおこなったり、各地でサウナランドフェスを開催。2021年のSaunner of the Yearを受賞。

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