第476回 AAA與真司郎のカミングアウトに全力の拍手!
男女混合パフォーマンスグループAAA(トリプルエー)のメンバーで、「SHINJIRO ATAE(AAA)」の名義でソロとしても活動をしている與真司郎くんが、7月26日に東京都内で開催された、今後の活動などを発表するファン向けのイベント「與真司郎announcemen」で、自身が同性愛者であることを告白したそう。
アタシが把握している限り、アイドル/アーティスト的な活動をし、広く知られている日本人男性で、自分がゲイであるとカミングアウトしたのは、與くんが初めてかも……? 與くんが涙ながらに語る動画を観、語られた内容の全文を読み、思わずアタシももらい泣き。
ただこのカミングアウト、アタシの周りや與くんファンのみなさんはとても好意的に受け止めているけれど、SNSなどには「異性愛者は自分が異性愛者だと言ったりしないのに、なぜわざわざカミングアウトする必要があるのか」という意見が結構あって、「21世紀に入って20年以上たつのに、まだこういう認識の人がいるのか」とびっくりしたわ。異性愛者がカミングアウトをしないのは、この社会ではわざわざ言わなくても「普通に」生きていけるからよ!
世の中の圧倒的多数を占めるのは異性愛者であり、多くのコミュニケーションが「相手が異性愛者であること」を前提に出来上がっている。男性なら、しょっちゅう「彼女いるの?」「どんな女性が好み?」「(女性との)結婚は?」と訊かれるし、上司や先輩、友人などからキャバクラや性風俗に連れていかれることもある。でも、同性が好きなことを知られたら、どんな反応が返ってくるかわからないから、毎回嘘をついたり、なんやかんやと理由をつけて断ったりする。それって、ものすごいストレスなのよ。
よく「会社は仕事の場であり、カミングアウトする必要はない」みたいなことを言う人がいるけど、会社でみんながプライベートの話を一切しないなら、それもわかるわよ。でも実際には、仕事の場で恋愛事情や結婚などについて訊かれることなんて日常茶飯事じゃない? だから、できるだけ嘘をつきたくない人、いちいち嘘をつくのがしんどい人はカミングアウトをするの。
ちなみにアタシも、物心ついたときから好きになるのはいつも男性だったんだけど、それを誰にも言っちゃいけないと思っており、当たり前のように隠していたの。でも、20歳のときにようやくゲイの友だちができ、カミングアウトを始めてから、「それまでの自分がいかに無理をし、自分を抑圧して生きてきたか」がよくわかったわ。「ようやくちゃんと呼吸ができるようになった」「のびのびと自由に生きられるようになった」という感覚があったから。
あと、ゲイであること以外は割と何でも話していた女友だちにカミングアウトしたとき、「ずっと、目に見えない壁を感じていたけど、やっとあなたという人がちゃんとわかった気がした」と言われたのも印象的だったわ。セクシュアリティって、たしかにパーソナリティの一部にすぎないけど、とても重要な一部でもあるのよ。
だから、「このことを打ち明けたことによって、本来の自分を分かってもらえる、ファンの皆さんとの距離が縮まることを本当に願っています」という與くんの言葉に、深くうなずいたわ。
もちろん、セクシュアルマイノリティ全員がカミングアウトする必要はないけど、したい人、できる人はどんどんすればいいとアタシは思っているわ。本当の理想は、わざわざカミングアウトしなくても、大半の人が「いろいろな人がいる」ことを普通に受け止められる社会になることだけど、そこに至るためには、できる人がカミングアウトをし、理解と認知が少しずつ広がっていく必要があるのよね。
今回、與真司郎くんがカミングアウトした理由は、「本来の自分を表現しながら、聞いてくれる人を幸せにしたい」ということだけど、その姿勢に全力で拍手を送るし、今後の與くんのますますの活躍を心から祈っているわ!
<水曜日掲載>
PROFILE:
エスムラルダ(えすむらるだ)
1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。」(ポット出版、共著)
twitter:@esmralda001