65本目・『仁義なき戦い 代理戦争』
いわゆる実録ヤクザ映画というジャンルであり事実がベースになっている、いわばNHKの大河ドラマみたいな感覚と言えないこともないが大河ドラマはかなり脚色している。なんせカメラもテープレコーダーもない大昔の話なのでそもそもはっきりしないと言えばしない。本当やら出まかせやらわからない。記録や伝承はあってもそれが真実と証明するものはない。みたいに書いていくとまたもや前振りだけで終わってしまいそうなので話を変えよう。
Jが『仁義なき戦い代理戦争』を初めて見たのは中学生のときだった。ネットもない時代。父親や兄の影響とかでもない。父親は当時離れて暮らしていたし兄弟はいない。テレビで『東映アワー』というのが夕方とかにやっていたがビデオもない時代なので数回しか見たことない。
つまりなんの知識もなく見たのだと思う。
映画館に貼られたポスターを見て。
いや、夕刊の広告は見てた。そして実録やくざ映画のどぎつい宣伝美術と惹句にハラハラドキドキしながら興味を持ってはいたのだ。いまの新聞ならぜったいに掲載されないと思う。あの頃の実録やくざ映画の広告は。
なにもかもをぶち壊せ!
どうなったっていいじゃないか!
長生きなんかしてなんになる!
昨日までの世界なんか全部ひっくりかえしてしまえ!
実録ヤクザ映画はそれだった。
Jはそう捉えていた。
Jはだから惹かれた。
Jはだから見に行った。
大好きだ。
それはいま見ても同じだ。
笠原和夫の脚本がすばらしい。
理路整然とするよりもたいせつなものをたいせつにしている。
辻褄よりもたいせつなものがある。
深作欣二の演出がすばらしい。
どんな小さな出会いにも真実はある。
えらそうにしてるやつ、うまくいってるやつがどうしたっていうんだ。
関係ない。
すべて関係ない。
この映画にはおもしろい役者が次から次に出てきて次から次に消えていく。それだけの話なのだ。『仁義なき戦い』はシリーズものだが順番になんか見なくていい。この『代理戦争』から見ても全然かまわない。前のを見てないとわかりませんよ、みたいな、ちまちましたことをその当時の東映はぜったいにしない。ネットの評判見てから映画に行く現代とは違う。現代はJに言わせればちまちましてる。なにもかも。
中学生のとき、一年遅れぐらいに港町の映画館でやってた『仁義なき戦い』大会で見たわけだがやってたのは三本だけ。『代理戦争』はそのときに見た。順番もどうだったかわからない。
中学生だったが。いまとあまり変わらない。変わってない。なにもかも。
(この項、終わり)
『仁義なき戦い代理戦争』(1973年/東映京都)
企画/日下部五朗
原作/飯干晃一
脚本/笠原和夫
音楽/津島利章
撮影/吉田貞次
助監督/土橋亨
擬斗/三好郁夫
監督/深作欣二
※杉作さんの新刊『あーしはDJ』(イーストプレス)が発売中!
<隔週金曜日掲載>
画像/『空の大怪獣ラドン』のポスター
PROFILE:
杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
twitter:@OOKAMINOHAKABA


