加えて、「逃げ得」もある。犯罪によって退去強制事由に該当した外国人は、刑期終了後に退去強制の対象となることがある。だが、民事上の損害賠償義務と入管法上の強制送還は法律上「別個の手続き」として処理される。
つまり、一度母国へ送還されれば、現地の住所や勤務先、資産を日本から追跡することは難しく、日本で得た賠償判決を実際に執行するハードルも極めて高くなる。結果、被害者側が泣き寝入りを余儀なくされる。これを「逃げ得」と呼ばず、何と言おう。
成りすましを許す配達の仕組み
街中で外国人のフードデリバリー配達員を見かけることは、もはや珍しくない。では、なぜこの仕事に外国人が参入しやすいのだろうか。その理由には、「アプリ中心で始めやすい」「日本語能力を高度に要求されない」「シフトが自由」などがある。このうち前の2つが、今回の問題に深く関係している。
フードデリバリーで働く際、配達員は企業と雇用契約を結ぶ従業員ではなく、個人事業主として業務委託を受けることになる。対面での面接などを経ず、本人確認書類や、外国籍の場合は就労資格を証明する書類をオンラインで提出して登録する仕組みだ。こうした対面での管理が行われにくい業態では、実際にアカウントの名義貸しや使い回しによる不正就労事件も起きている。
また、飲食店での接客や一般企業での勤務とは違い、注文の受け取りから配達先までアプリの指示に従えば仕事が成立する。そのため、日本語に不慣れな外国人でも参入しやすい。
もちろん、正規の在留資格と就労資格を持って働く外国人配達員に問題があるわけではない。しかし、対面での面接や日常的な勤務管理がない業態だけに、いったん本人確認をすり抜ければ、他人名義のアカウントを使った不正就労が入り込む余地も生まれる。
今回の事件でも、事件発覚から逮捕までの捜査を複雑にした一因が「アカウントの使い回し」だったという。本人確認をすり抜ければ、身元や就労資格に問題のある人物でも、他人名義のアカウントを使って配達現場に入り込むことが可能になる。これは、得体の知れない人物が、利用者の自宅玄関というプライベートな空間に足を踏み入れるという恐ろしい状況があることを意味する。
偽アカウントが売買される闇
さて、コミルジョノビッチ容疑者は、どのようにして他人名義のアカウントを手に入れたのか。
「加害者は偽のアカウントや偽の身分証明書を手に入れられるLINEのグループに入っていたようだ。そのグループでは、偽造免許証や使わなくなったアカウントなどが売買されており、コミルジョノビッチ容疑者もこのグループでアカウントを購入したと考えられている」(捜査関係者)
