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「やしろあずき騒動」から、「実話偏重主義」について考える:ドラァグクイーン・エスムラルダ連載466

「やしろあずき騒動」から、「実話偏重主義」について考える 連載
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5月8日、YouTuberのコレコレ氏が、漫画家・実業家のやしろあずき氏について自身のライブ配信で暴露したというニュース、みなさんはご存じかしら。

アタシも一応、その配信の該当箇所を観てみたんだけど、なんでも、コレコレ氏のところに、「やしろ氏と一時期同棲していた」という女性から、画像や音声つきで「夫婦円満を一つのネタにしてエッセイマンガを展開していたやしろ氏だが、現在離婚裁判中である」「有名なコスプレイヤーやYouTuberなどさまざまな女性に手を出し、相手の情報をSNSでさらしている」「違法賭博に手を出している」といった告発があったそう。

ところが、その後、女性は「女性問題については話し合いが成立した」「違法賭博の証拠となる音声は捏造した」とコレコレ氏に伝えて姿を消し、やしろ氏も、創業メンバーだった会社を除名になったりしながらも「コレコレ氏の配信で話されていた内容の多くが捏造である」とブログで報告。一方で、ネット探偵たちにより、やしろ氏がこれまでについた嘘(「やしろ氏が中学時代に描いた黒歴史ノートの原本」として某図書館に展示されているノートが、2011年以降に発売されたCampasノートであり、年代が合わない)の一部が明らかにされるなど、何が何やら状態になっているわ。

実はアタシ、ツイッターで流れてくるやしろ氏の漫画を割と楽しんで読んでいたの。なので、今回の一連の騒動にはちょっとびっくりしているんだけど、「がっかりしました」なんて怒るつもりはまったくなし。むしろ、「本当にすべてが嘘だったとしたら、よくあそこまで話作ったなァ」と、ちょっと面白がっているわ。

アタシ、自分自身があまり嘘が得意じゃない(つじつまを合わせなきゃいけないのが面倒くさいし、バレたときに恥ずかしい思いをするのが嫌なので、嘘なんてつかないほうがラクだと思ってる)こともあって、平気で嘘をつく人の心理にめちゃくちゃ興味があるの。まあ、できれば直接関わりたくはないけど、「何がその人に嘘をつかせているのか」とか「嘘がバレたときにどのような気持ちになるのか」とか、つい知りたくなっちまうのよね(あ、別に、やしろ氏が嘘をついていると決めつけているわけじゃないわよ!)。

あと、こういう「嘘松」案件が話題になるたびに感じるのが、世の中の「実話偏重主義」的な空気。嘘松に腹を立てる人って、嘘をつかれたことより、「実話だと思って楽しんでいたものが、そうじゃなかった」ことに怒ってる気がするんだけど、その物語を楽しんだことに変わりはないのに、「実話ベースなら価値があり、フィクションなら価値がない」みたいになるのって、なんだかちょっと変じゃないかしらね……(あ、別に、やしろ氏を擁護してるわけじゃないわよ!)。

 

<水曜日掲載>

PROFILE:
エスムラルダ(えすむらるだ)
1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。」(ポット出版、共著)
twitter:@esmralda001

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