第14回 中孝介
事件からだいぶ日が経ってしまったが、言及しなければならないだろう。中孝介氏のことである。
先日、彼が都内の一般銭湯で20代男性に性的暴行を加えたとして逮捕されたのだ。
この件は後に不起訴処分で釈放されているので、事の真偽は不明である。よって、この原稿は氏を具体的に非難するものではない。ここにおいて中孝介氏の存在は、ハッテン行為の概念だと思っていただいたほうがいい。実刑を受けるよりもハッテンの概念とされるほうがご本人にとっては嫌だとは思うが。
このニュースを見たときに私がまず思ったのは、「ノンケ様と私たちゲイとでは、『性的暴行』の受け止め方が違うだろうな」ということである。
特に、『実話BUNKA超タブー』をご購読の人権意識高くてフェミニストの皆様方はズバリ「普通の銭湯でレ●プしちゃったの!? ホモって怖い!!」と思われたのではないだろうか。
ご心配をおかけした点についてはホモを代表して心からお詫び申し上げるが、おそらくそれは違う。私は見てきたかのようにその情景を克明に記すことができるのだ。
その20代の男性はきっと、湯上りで更衣室の椅子でくつろいでいるときにウトウトしてしまったのだろう。夢うつつのレム睡眠と若い男子。その結果どうなるか。そう、意図しない勃起である。今やハッテンの概念と化したとはいえ、中氏にも分別はあったはずだ。しかし若い男子の健康的な勃起を目の前にしたら分別が揺らいだというか、「俺を誘ってるのかな?」と勘違いしたのも無理はない。周りに人がいないのを確認して、思わずそっと手を添えたのだろう。それでも気付かないとなると勢いでお口でパックリしてしまったのかもしれない。そこで目覚めた男子に「何してんだお前!」…というわけである。
もちろん一般の場でそんなことをするゲイが一番悪い。だが、長らくそういう手段でしかお相手を見つけることができなかった私たち同性愛者の哀しい歴史はDNAに刻み込まれているのである。
普通、一般の場で私たちはどう行動するかというと、万が一の場合にも言い訳ができるようにミリ単位で近づいていって、触れる場合もほんの一瞬、間違ったかな? くらいの印象で済ますようにしている。そもそもその前にアイコンタクトありき。まれに、短髪・ヒゲ・マッチョあるいはガチムチの歩くカミングアウトみたいな人には直接的に行くこともあるが、台東区あたりの銭湯で本職のヤクザをゲイと勘違いして手を出した結果、洒落にならないトラブルに巻き込まれる話も聞くので、やはり気を付けたほうがいい。