350回 ジェームズ・ガン監督『スーパーマン』を観てきた(ただの感想)
ジェームズ・ガン監督の『スーパーマン』を観てきた。
いい映画だった。国内外問わず、現実の状況が厳しいことにあふれていて、うかつにSNSを開くと本当に精神的にまいってしまうような情報が濁流のごとく押し寄せてき、そしてそれらは簡単に解決することはできない。
そんな日常の中で、この映画は心の平穏をあたえてくれるような映画だった。非常に楽しい作品だったし、なんというか、これを見て怒るような人間でなく、素直に楽しめる人間で本当に良かったと思う。
ここから書くのは私の個人的感想であり、批評でも考察でもない。多少のネタバレもあるので、それでいいという人だけが読んでくれればいいと思う。
まず、文句なしのカッコいいアクション映画であり、コメディ要素満載の楽しい傑作だった。ジェームズ・ガン監督作品だけに原作コミックやDCユニバース作品に詳しい人ならわかるような遊びも多いのだろうが、自分のように説明されないとわからないような人間でも楽しめる。
敵役はほんとに憎々しいし、でてくる超人たち、グリーン・ランタン、ホークガール、ミスター・テリフィック、メタモルフォもそれぞれに見せ場があり、うれしくなる。特にミスター・テリフィックのバトルシーンはほんとにカッコイイ。
今まで様々なスーパーマン像が描かれてきたわけだが、今回のデヴィッド・コレンスウェットが演じるスーパーマンは特殊な力こそ持っているが精神面では非常に平凡な青年である。
クリストファー・リーヴの演じた高潔なスーパーマンとも、ヘンリー・カヴィルの演じた苦悩するハードなスーパーマン像とも違う、いたって平凡でナイーブな好青年だ。
朴念仁で気の利かない、田舎育ちの少しダサいところのある好青年だ。メンタルが強いわけでもなく、SNSで悪口を書かれれば旗も立てるし、深く傷つくこともある。基本他人よりメンタルが弱い方かもしれない。不器用で人に自分の気持ちを伝えるのも上手いわけではない。空気が読めないところもある。融通も利かない。挑発されて頭に血が上り、見え透いた敵の罠に簡単にひっかかったりもする。
でも、とても優しく善意に満ち溢れた青年だ。全ての人間の命を救いたい、いや動物の命も同じように大切に思っているし、町で暴れる怪獣の命すらできれば救ってあげたいと思っているような青年だ。
非常に青臭く、人によっては現実を見ていない子供じみた正義感だと思う人もいるだろう。
そんな彼だから、ボラビア共和国によつ隣国・ジャルハンブル侵攻に介入してしまう。そこで人が殺されるから。