66本目・『実録三億円事件時効成立』
この手の、実際に起きた、世間が注目している事件をドキュメントタッチのドラマにしていた当時の東映。題材は痴情のもつれから国家間戦争、社会現象、暴力団抗争、さらには宇宙人襲来まで、観客が興味を持ってくれそうなことならなんでもよかった。いわば週刊誌、夕刊紙が好む題材であった。いまならばSNSでバズりそうなことと言えばいいだろうか。今日、Netflixの制作する作品にその傾向が見えなくもないがかつての東映が着手、作品化していたものはそれどころの騒ぎではない。
着手、企画が進みつつも実現しなかったものも多い。そのいくつかは公開予定として発表されたものもあり映画ファンの知るところとなっているが表出してないものも当然多い。
映画といってもさまざまだ。
大感動するものもあればデートに最適なものもある。
この手の映画はどうだろう。
パチンコ屋やゲームセンター、ボーリング、さらには安い飲み屋、いっそなにもせず昼寝がライバルだった。
Jも芸術映画から感動作まで、いろいろ見たしそれぞれ酔いしれ興奮もしたが。
やっぱりこれが好きだ、と思うのはこうした映画であった。
逆に言えばパチンコ屋やゲームセンターも好きなのだ。ボーリングも好きだがひとりですることは少ない。ひとりでは行ったことないかも。「それはほんとにボーリングが好きとは言えないね!」とお叱りを受けるならそのとおりかもしれない。ほんとに好きではないかもしれないが好きは好きなのだ、ボーリング場の音、空気、そして球がごろごろ転がる振動、流れている流行歌、飲むコカ・コーラ。Jにとっての東映映画はまさにそれがライバルだった。
この映画のポスターにはこうある。
『これが真犯人だ!!一億二千万人が注目する12・10を前に、東映捜査陣が三億円事件の全貌を明かす!!』12・10というのは1975年12月10日。この事件の時効成立日である。この映画の劇場公開日はその一ヶ月前、1975年11月22日であった。
そしてポスターに大きく印刷された犯人の顔は岡田裕介氏。のちの東映株式会社社長である。
(この項、つづく)
『実録三億円事件時効成立』(1975年、東映東京)
企画∶太田浩児、坂上順
原作∶清水一行
脚本∶小野竜之助、石井輝男
撮影∶出先哲也
照明∶川崎保之丞
録音∶広上益弘
美術∶藤田博
編集∶祖田冨美夫
音楽∶鏑木創
監督∶石井輝男
※杉作さんの新刊『あーしはDJ』(イーストプレス)が発売中!
<隔週金曜日掲載>
画像/『実録三億円事件時効成立』のDVDジャケ
PROFILE:
杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
twitter:@OOKAMINOHAKABA


