AV新法で見直してほしいのは3点
2022年6月に参院本会議で可決されて成立することとなったAV新法こと『AV出演被害防止・救済法』。AVを筆頭とする性的動画の撮影や配信で、出演者が被害を受けることを防ぎ、救済するための法案だ。契約を交わした後、1カ月間の撮影は禁止され、撮影の終了から4カ月間は公表を禁止される〈撮影1カ月公表4カ月ルール〉や、AV出演1年間は無条件で契約解除が可能であることが規定され、契約解除の妨害や契約書交付・義務説明違反にも懲役もしくは罰金のペナルティが課されることとなった。
このAV新法に関して業界内から反発の声が多くあがった理由のひとつは、極めて短期間で立案され、その過程で女優、監督、メーカーといったAV業界の当事者の声がほとんど聞かれなかったことにある。いわば業界を見知っていない部外者たちにより、机上での議論のみで成立したといっても過言ではなく、施行後、現場に大混乱をもたらしたのだ。
そんなAV新法の見直しが今年の6月に迫りつつある中、AV監督で作家の二村ヒトシ氏と、アメリカで日本人初のペントハウスペットに選出されたポルノスターのMARICA氏を呼びかけ人とした『AV産業の適正化を考える会』が発足。紗倉まな氏や星乃莉子氏といったAV女優や、ソフト・オン・デマンドを始めとするAVメーカー、参議院議員の浜田聡氏や大田区議会議員のおぎの稔氏といった政治家に加えて、弁護士の亀石倫子氏、タレントで演出家のテリー伊藤氏など有識者たちの賛同を得て署名活動や国会前デモなどを行い、当事者たちの希望と実状に沿った見直しを訴えている。
しかし「AV新法を改正し、AV業界を崩壊の危機から救いたい」と言われても、新法のどこが問題で、このままだとなぜAV業界が崩壊するのかが、いまいち伝わりにくくもある。
そこで今回は会の発起人でもある二村氏にインタビューを敢行。現在のAV業界をとりまく状況と新法の問題点、そしてAVの未来について語っていただいた。
「我々が新法の見直し要項として請願したいのは3点。ひとつは法律の名称変更です。現在の名称には、AVに出演することイコール被害であると決めつけるニュアンスがある。これは主体性をもって選択してAVに出演している女性を侮辱することにならないでしょうか。ふたつめは撮影から公表までの期間規制の柔軟化。これについては、紗倉まなさんがツイートで、とてもバランスよく、過不足なく言及してくださってます。つまりAV新法には良い面も悪い面もある。初めての撮影をする前の新人女優さんに熟慮の期間が長く与えられるようになったのは本当にいいこと。ただ、そのルールが新人のデビュー作だけでなく、すべての作品に一様に適用されてしまっていることが中堅やベテランの女優さんのモチベーションを下げている。だからそこはその作品の出演者の総意によって、ルールに柔軟性を持たせてほしい。なにしろ自分が出た作品を一定期間ろくにSNSで告知もできないし、専属契約していない女優さんがAVだけでは食べていけないということも起きている」
皆が女優を子ども扱いしてきた
AV新法が制定されるきっかけとなったのは、2016年頃から社会問題化した『AV出演強要問題』だ。それから8年経ったいま、強要されて出る女性はゼロになったといえるのだろうか。