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橋本愛がLGBT活動家から批判を浴びて謝罪「トランス女性は女風呂や女子トイレを使わない」という活動家の嘘:松浦大悟

社会
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女優の橋本愛が、トランス女性が女性用スペースを使用することへの危惧を吐露したところ「トランスジェンダー差別」だと批判を浴びて謝罪した。橋本愛の危惧は本当に差別なのか。ゲイであることを公表している元参議院議員の松浦大悟氏が解説する。(※初出/実話BUNKA超タブー2023年5月号)

女優の橋本愛さんが自身のインスタグラムのストーリーでトランス女性についての文章をアップしたところ、一部の人たちから「トランスジェンダー差別だ」と批判され、謝罪に追い込まれる事件があった。

ゲイの当事者として日頃からLGBT関連の投稿をチェックしている筆者は、「今度のキャンセルカルチャーの生贄は橋本さんか」とため息を漏らした。

NHK大河ドラマ『青天を衝け』では大家族を支える渋沢栄一の妻を演じ、筒美京平トリビュートアルバムでは可憐な歌声で『木綿のハンカチーフ』を聴かせてくれた橋本さんが、一体どんな罪を犯したというのか。

橋本さんは「入浴施設や公共のトイレなど、そういった場所では体の性に合わせて区分する方がベターかなと思っています」と綴り、「女性として、相手がどんな心の性であっても、会話してコミュニケーションを取れるわけでもない公共の施設で、身体が男性の方に入って来られたら、とても警戒してしまうし、それだけで恐怖心を抱いてしまうと思います」と心の内を打ち明けた。

いま欧米では、男性器のついているトランス女性が女性専用スペースに入ることの是非が大論争となっている。女子トイレや女性用シャワールームにこうした人がいても、文句を言えば逆に裁判で訴えられ敗訴してしまうのだ。連日欧米から流れてくるトランスジェンダーのニュースに、橋本さんも触れていたに違いない。それが先ほどの発言につながったのだと想像する。

橋本さんは激しいバッシングに耐えきれず、以下のように詫びた。

「本当に、心から、ごめんなさい。本当にごめんなさい。学びの機会をくださり、本当にありがとうございます」

これに怒ったネット民は「#橋本愛さんに連帯します」といったハッシュタグをつけて対抗した。その結果、女子トイレや女湯に入るトランス女性を非難する声は日増しに大きくなっていった。岸田首相が、荒井秘書官の同性愛者嫌悪発言の波紋を鎮めるためにLGBT理解増進法を早期に成立させるよう指示を出していたこともあり、世論の関心は高まりを見せていた。同法案には「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」と記されていて、可決すればこうした抗議の声さえ差別と認定されてしまうのではないかとの不安が背景にはあった。

そうした中、LGBT法連合会は記者会見を開き、トランス女性へのデマが当事者を苦しめていると声明を出した。LGBT関連法ができてもトランス女性は女湯に入るわけではないというのだ。

だが本当にそうだろうか。法律によって性自認による差別が許されないと規定されれば、女子トイレだろうが女湯だろうがすべての局面で生物学的女性と同等に扱わなくてはならないはずだ。女子トイレや女湯に入る権利を行使させないことこそ差別にあたる。その意味において、筆者はネット民の直感は正しいと感じる。トランスジェンダーの人権を守らなければならないのは当然だが、都合の悪いことに蓋をするだけでは本質は見えてこない。彼らの言い分を一つひとつ検証してみたい。

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男性器を隠して女湯に入るトランス女性

筆者は2019年からAbemaTVなどで女性専用スペースに侵入する身体男性のトランス女性について問題提起していた。それに対し、身体女性のトランス男性である活動家、遠藤まめた氏は、バズフィードの記事などで「女子トイレや女湯に入りたがっているトランス女性はいない。松浦はトランスジェンダーについてよく知らないのだ」と繰り返し批判した。だがネット社会では嘘はすぐバレる。その後、こうしたトラブルについて、海外メディアが毎日のように伝えるようになっていった。

実はこれは、当時からLGBT当事者の間ではよく知られた事実だった。しかし真相が明らかになると、トランスジェンダーへの風当たりが強くなる。国民の気持ちも離れ、差別禁止を盛り込んだ法律が作れなくなってしまう。だから左派LGBT活動家は「LGBTの不都合な真実」を伏せようとするのだ。

読者の皆さんには、ぜひSNSを検索してもらいたい。女子トイレや女湯に入り、自撮りをしているトランス女性の画像が山のように出てくるだろう。

彼女たちは「股間タック」という方法を用いている。これは、睾丸を指で恥骨のあたりに押し込み体内に収納。余った皮で陰茎を包み接着剤で止め、女性器そっくりの形状を作り出す技のことだ。

以前、身体男性のトランス女性である小説家、尾崎日菜子氏が「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ?」とツイッターで告白したが、彼女もこの股間タックをしていたのだと考えられる。

古より琉球空手に伝わる「コツカケ(骨掛け)」は、敵からの金的攻撃を防御するため、腹筋を巧みに操作し睾丸を恥骨の奥に引っ掛ける秘技だが、股間タックはこれと似ている。漫画『グラップラー刃牙』のキャラクター、愚地独歩の技としてご存じの方もいるのではないだろうか。

「女子トイレや女湯に入りたがるトランス女性はいない」というのはトランス女性の善意をあてにしている話であり、実際の現場は理想とは違う。

「トランス女性は女性」という主張の源流

お茶の水女子大学は2020年からトランス女性を女子学生として受け入れることを始めたが、ガイドラインには入学後に性自認が再び男性に変わっても退学させることはないと書いてあり、その頃から生物学的女性による懸念の声が大きくなっていった。レズビアンを公表している同志社大学の教授は、手術は18歳以上からしかできない。たとえ身体男性のトランス女性であっても、部活の更衣室やお風呂などは他の女子学生と一緒でなければならないと述べ、さらに世間の反発は勢いを増した。

それに対抗する運動としてトランス活動家が始めたのが「#トランス女性は女性です」だ。女性は単一的なものではない。「女性村」の住人には、レズビアンの女性もいれば性別適合手術を受けて男性器を切除した性同一性障害の女性もいる。もちろん手術を必要としない男性器が付いたままのトランス女性もいる。そんな村の片隅に、あなたたちシスジェンダーの女性(性自認と身体的性が一致している女性)も暮らしているのだ。だからいかなる場面においてもトランス女性を同じ女性として処遇しなくてはならない。だって男性器が付いていても私たちは女性なのだから、と彼女たちは説明する。

こうした考え方の源流は、ジョグジャカルタ原則にある。04年、イギリスは世界で初めて、医療行為なしで法的に性別変更できるジェンダー承認法を成立させた。その2年後、キングス・カレッジ・ロンドンのロバート・ウィントミュート教授たちがインドネシアのジョグジャカルタに集まり作成したのがジョグジャカルタ原則だ。

国連はLGBTについて新たな国際人権基準を確立する考えはない。なぜなら世界人権宣言や国際人権法の中に既に包含されていると解釈するからだ。しかし、その中には具体的なことは何も書いていない。だったら自分たちで使えそうな部分を抜粋してまとめようじゃないかということで作ったのが、この国際文書なのだ。法的拘束力はないが世界中に多大な影響力をもたらした。

第3原則にはこう書いてある。

《各々が自分で定義した性的指向や性自認は、その人の人格と一体化しており、自己決定、尊厳、自由の最も基本的な側面の一つである。何人も、自らの性自認を法的に認めるための要件として、性別適合手術、不妊手術、ホルモン療法などの医療行為を受けることを強制されない。》

これによって、欧米を中心とした国では男性器の付いた人でも自分が女性だと言えば女性となった。性自認を第三者が否定することは差別となった。

日本学術会議は、戸籍の性別変更に手術要件を課している現在の性同一性障害特例法を廃止し、自己申告だけで変更を可能とする性別記載変更法を新設するよう政府に求めているが、このジョグジャカルタ原則の方向性を踏まえたものだ。そしていま最高裁では、生殖不能手術要件について違憲性審査が行われている。

ところが、これを作ったウィントミュート教授は、近年になって悔恨の念を述べている。06年当時はセルフID(自己申告での性別)について理解が及んでいなかった。男性器を持ったままの人が女性の空間にアクセスするとは誰も考えていなかった、と。

LGBT法連合会の会見に同席した立石結夏弁護士は、自認する性別と全裸になった外見から判断される性別が一見して異なる場合、銭湯の施設管理者と協議すれば良いというが、そのこと自体がジョグジャカルタ原則に沿った人権基準では差別とされる。

「自分の性別は自分で決める」という思想はトランスジェンダリズム(性自認至上主義)と呼ばれている。ジョグジャカルタ原則から産まれたイデオロギーだ。アメリカのバイデン政権はこのトランスジェンダリズムに基づいてパスポートを改正し、男性・女性・Xという3つの項目から自由に選択していいとした。もちろん医者の診断書はいらない。アフター・コロナでインバウンドが増える中、アメリカから身体男性のトランス女性が温泉を訪れ、女性欄に印がついたパスポートを見せながら女湯に入りたいとゴネたらどうなるだろうか。もし立石弁護士がいうように運営者が断ったなら、日本は差別大国だと米国メディアは報道するだろう。

共産党に絶望した女性たち

LGBT法連合会の会見では、こうしたトランスジェンダリズム批判は宗教右派によるバックラッシュだとの説明があったようだが、それは偏った見方だ。

たとえば同和問題の解決に取り組む自由同和会は、ホームページに次のようなアナウンスを出した。

《※自由同和会は、心の性は認めず、チンチンぶらぶらでの女湯への入場は認めません。》

部落差別と戦ってきた自由同和会がこうしたコメントをする真意は何か。それは、「何が差別かは俺たちが決める」という態度に、かつての同和利権の姿が重なったからだ。LGBT活動家が正義を独占しているのではないかという危惧の表れでもあった。「自分たちと同じ轍を踏んでもらいたくない。常識に帰れ」との気持ちがうかがえる。

また、2022年に行われた参議院議員選挙は奇妙なねじれ現象を招いた。セルフIDに警鐘を鳴らす団体『女性スペースを守る会』は、各政党へLGBT法を慎重に議論するよう呼びかけた。内閣府の調査によると、性暴力被害にあった生物学的女性は14人に1人に上る。セルフIDを導入した欧米ではDVシェルターや女子刑務所、女子トイレや女性用シャワールームで身体男性のトランス女性による性犯罪が起こっており、「性自認を理由とする差別は許されない」が法律に書き込まれると日本でも同様の事態になることが予想されるためだ。

元々『女性スペースを守る会』には共産党支持者が多く、日頃から女性の権利について積極的に発言してきた共産党だけは自分たちの思いを汲み取ってくれると期待していた。ところが共産党はトランス活動家の意見にしか耳を傾けず、生物学的女性たちの声を聞くことはなかった。

絶望した彼女たちが参院選で投票した先は、自民党の山谷えり子氏だった。山谷議員は、性教育に反対するなど家父長制的道徳に価値を置く保守政治家だ。その山谷氏しか自分たちを守ってくれる国会議員はいないと共産党支持者の女性たちは考えたのだった。

その流れを決定付けたのが芥川賞作家の笙野頼子氏だ。『赤旗』に何度も登場した笙野氏が山谷氏に投票するとネットで宣言したことで、多くの女性たちは雪崩を打って共産党を見限った。彼女たちの応援もあり、山谷氏は4回目の当選を果たした。

東京大学の清水晶子教授と武蔵大学の千田有紀教授のバトルも、事態の深刻さを雄弁に物語る。トランス女性と生物学的女性の権利をどこで折り合わせるか検討すべきだと雑誌『現代思想』で主張した千田教授を、クィア学者の清水教授が攻撃したことでラベリングが始まり、カルチュラル・スタディーズ学会が主催する『カルチュラル・タイフーン2022』では、富山大学の斉藤正美教授が実名を挙げて千田教授を「トランスフォビア」だと罵倒した。千田教授は差別だとする根拠を明かすよう斉藤教授に質問を投げかけたが、現在に至るまで回答はない。

千田教授は血圧が180を超え、下痢が止まらなくなり、たまりかねて日本を脱出。現在はアメリカで娘と暮らしている。国会のみならず、アカデミズムの領域でも議論ができない状況に陥っているのである。

いま紹介した事例はいずれも宗教右派とは関係ない。論理的に考えて、このムーブメントはおかしいだろうとの指摘だ。渋谷区や荒川区の女子トイレは廃止されていき、男女共同トイレになった。LGBTへの間違った配慮が、逆にLGBTへの憎悪を生み、社会に沈殿していくことを筆者は恐れている。

文/松浦大悟
初出/実話BUNKA超タブー2023年5月号

松浦大悟「同性婚に反対したら即差別主義者認定するのは大間違い」
LGBTに関する法整備において、「同性婚を認めるのは当然!」「LGBT差別禁止法を早急に進めよ!」という意見に反論しようものなら、即、差別主義者認定される状況になっている。しかし元参議院議員の松浦大悟氏は、ことはそう簡単な問題ではないという。 岸田文雄首相が同性婚について「社会が変わってしまう課題」と答弁。また荒井勝喜...

PROFILE:
松浦大悟(まつうら・だいご)
1969年生まれ。神戸学院大学卒業後、秋田放送にアナウンサーとして入社。秋田放送を退社後、2007年の参院選で初当選。一期務める。自殺問題、いじめ問題、性的マイノリティの人権問題、少年法改正、児童買春児童ポルノ禁止法、アニメ悪影響論への批判、表現の自由問題などに取り組んだ。ゲイであることをカミングアウトしている。著書に『LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』(秀和システム)。

松浦大悟 撮影/武馬怜子

実話BUNKA超タブー2023年5月号 - コアマガジン 一般
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