PROFILE:
松浦大悟(まつうら・だいご)
1969年生まれ。神戸学院大学卒業後、秋田放送にアナウンサーとして入社。2006年に秋田放送を退社。2007年の参院選で初当選。一期務める。自殺問題、いじめ問題、性的マイノリティの人権問題、少年法改正、児童買春児童ポルノ禁止法、アニメ悪影響論への批判、表現の自由問題などに取り組んだ。著書に『LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』(秀和システム)。
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撮影/武馬怜子
国家を揺るがす性自認至上主義
2025年1月20日、アメリカの47代大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。ワシントンの連邦議会議事堂で行われた式典にはバイデン前大統領夫妻やクリントン元大統領夫妻、オバマ元大統領も出席していたのだが、トランプ大統領は彼らを前にして「アメリカをここまで衰退させた犯人はこいつらリベラルだ」という趣旨の演説をし、米民主党が実行してきた政策を180度転換すると述べたのだった。
とりわけ「本日から性別は男性と女性の二つだけというのが政府の公式方針となる」との発言には、日本でも既存マスコミやLGBT活動家が阿鼻叫喚となった。
ゲイのジャーナリストである北丸雄二氏は東京新聞の『本音のコラム』で《女性もトランス女性も共に弱者。なのに「トランス女は男」と加害のみを印象付け、両者を共に救う代わりに「常識」を使って対立を煽る》と批判。同じくゲイのライターで一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣氏は雑誌『GQ』において《なぜDEI(多様性、公平性、包摂性)施策を見直す動きが広がっているのか。大きな要因は政治的なバックラッシュ(揺り戻し)だ》と憤る。
だが彼らLGBT活動家は、トランプ大統領がどうして「常識の革命」を掲げなければならなかったのか、その背景を説明しない。
スペースXやテスラのCEOを務め、トランプ政権で政府効率化省の責任者に任命されたイーロン・マスク氏は、息子が性転換しトランス女性となったことを深い悲しみと共に公表している。医療関係者から思春期抑制剤の投与に同意を求められた際、署名しないと子どもが自殺するかもしれないと言われ、熟考する時間も与えられないまま判断させられてしまったという。数年前から欧米では「自分の性別は自分で決める」という性自認至上主義が国家を揺るがす大問題となっているのだ。
昨年日本でも出版され反響を巻き起こした『マテリアル・ガールズ』によると、イギリスでは2004年当時、約2000人~5000人のトランスジェンダーがいると推定されていた。ところが2018年には政府発表で20万人~50万人へと急増した。増えているのは、自分のことを「トランス男性」または「ノンバイナリー(男性でも女性でもない、あるいはその両方)」とみなす少女たちだった。