エストロゲンと女性の行動パターンの関係はそれ程研究されていませんが、授乳時に分泌されるオキシトシンとの関係は様々な研究があり、人間の幸福感や、子育て時の攻撃性に関わるこのホルモンの分泌形態は男女で大きく異なり、女性の子育て時の行動パターンに大きく影響していると思われます。
それもそのはずというか、文明社会における男女平等の理念がどうあれ、動物として我々人間は哺乳類であり、1年以上にわたる妊娠―授乳期においては、それはどうしたって母親は巣穴(?)で静かに過ごし、父親が餌をとってこざるを得ず、つがいで子育てをするオオカミや、その他の様々な動物同様に、男女とも哺乳類としての子育てに適した行動パターンを取る様に進化していると思われるからです。
また、仮にそういう生来的な差異が男女になく、総てが教育や社会構造によって生じたものだとしても、結果的に男女の行動パターン他に差が出ることには変わりありません。
従って、「女性ならではの感性や共感力」というものが一体全体何を指すか不明であることはさておいて、人類を男性と女性とに二分して、何らかの形で定義した「感性/共感力」(例えば「ガンダムをカッコいいと思うか?」とか、「シンデレラに共感するか?」とか)を測れば、それは当然男女差が出てくると思います。
で、最初に立ち返って、「女性としての、女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら仕事をしていただくことを期待したい」をもう一度考えると、大臣に期待するものが「感性・共感力」だというのがそもそもショボいことはさておき、かつ原因は兎も角そこに一定の男女差があるとして、それはまあせいぜいが思春期――18歳~22歳くらいまでには形成され終わるもので、その後、男性も女性も、一生懸命学問をし、社会で実体験を積んで、男女に限らない全人類に当てはまる知識や知見を身に着け、社会的に承認されて議員となり、大臣となっている筈で、「男女の差は現実としてあるけれど、そんなものに囚われない高い見識を発揮していただきたい」と私なんぞは思います。皆さん、如何でしょうか?
文/米山隆一
写真/首相官邸ホームページより
初出/実話BUNKA超タブー2023年11月号
PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて新潟5区で初当選。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama