29本目・『コンボイ』
アメリカ版トラック野郎である。
「原作/鈴木則文、澤井信一郎」とクレジットがあってもいいぐらいだが、ない。
ま、映画に限らず音楽や絵画、演劇にスポーツ、刺激を受けたり影響されたりして成立するものだから似るのは仕方ない。それはペキンパーだろうが石井輝男だろうが当然のことなのだ。トラック野郎として登場するバート・ヤングなどは山城新伍に似ている。
石井輝男監督の名前を出したのには理由がある。
私見に過ぎぬと前置きして、石井輝男の東映暴走族映画風味がプラスされている。というか、「トラック野郎」プラス「暴走族シリーズ」が「コンボイ」であると言うね俺は。
ま、ペキンパー監督がこの時期の東映映画を見ていてもなんら不思議ではない。目指すものがあまりに近い。
暴走族映画風味がプラスされたぶん、こちらの大型トラックたちはハッキリとアウトローである。
ペキンパーでいえば『ワイルドバンチ』のパイクたちに近い。横一列に並んで殴り込むところまで同じだ。人間なら簡単だが大型トラックが何台も横並びで殴り込むのはただごとではない。やはりペキンパーという映画監督はどうかしている。
悪徳警官のアーネスト・ボーグナインがアウトロー運転手のクリス・クリストファーソンに俺たちには共通点がひとつあるな、と言う。俺たちは一匹狼だ、と。
するとクリス・クリストファーソンが言うのだ。
いや、似ている部分がもうひとつある。
時代に流されず絶滅していくタイプだ、と。
そこがすべてだとは思う。
いつの世も、生まれてくるものと消えていくものとで構成される。
それを自然なこととしてクールに受け止めるのでなく、ロマンチックに捉えたい。だから結局のところかなりの現実離れ度で夢のような物語だが、それが映画だ。
残酷で味気ないこの世界をロマンチックに変換してひとときといえども気晴らしさせてくれる。
繰り返す。それが映画だ。だから棚にある。
余談だが見たかった。トラック野郎VSコンボイ。クリストファーソンと文太さんはすごくあうと思う。自分、社会との対峙しかたも似ている。いい映画になったと思う。
出演/クリス・クリストファーソン、アリ・マッグロー、バート・ヤング、マッジ・シンクレア、フランクリン・アジャイ、シーモア・カッセル、アーネスト・ボーグナイン
監督/サム・ペキンパー
脚本/B・W・L・ノートン
撮影/ハリー・ストラドリング・ジュニア
音楽/チップ・デイビス
編集/ガース・クレイヴン、ジョン・ワイト
主題歌/C・W・マッコール
<隔週金曜日掲載>
画像/上記作品 ポスター
PROFILE:
杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
twitter:@OTOKONOHAKABA