第10回:TVスターの蛭子能収
♫サイン求める声は私をよけてスターの元へ寄ってゆく
これはちあきなおみの『劇場』という曲の一節です。TVでお馴染み人気歌手の前座が無名歌手で、前座を終えて劇場から出てくると、ドサ周りのTVに出てない歌手なんか知らんと「ファン」たちがまあこんなふうに…と、蛭子さんと街を歩いているときによくこんな状況になりその度に私の脳内ではちあきなおみのこの曲がかかるのであります。
今、毎年神戸名物の古本屋「ちんき堂」で催している「晩秋の根本敬まつり」に向かう新幹線の車中で書いてます。イベントは展示や、注文色紙といって、来場された方々の「こういう絵を」という注文に¥10000で応えて描くってこともやってますが、私の漫画のキャラはまあ当然として、こうこうこういう蛭子さんをこんな風に描いて下さいという注文も実に多いのです。
その方々はテレビタレントの蛭子ファンでなく、『ガロ』、『地獄に堕ちた教師ども』、『私はバカになりたい』、『私の彼は意味がない』、『狂ったバナナ』などの絶頂期の狂った、まあある意味等身大の蛭子漫画が好きな人たちです。文章本なら『エビスヨシカズの密かな愉しみ』あたりが好きで、本人が編プロまかせしかし蛭子著作で一番売れた『ひとりぼっちを笑うな』など読んでなかったり、読んでも捨ててるひとたちです。
蛭子絶頂期の漫画ファンと私のファンはほぼ重なってます。
蛭子能収ファンといってもTVタレント蛭子能収のファンなる人たちはお金は使いません。たまに使っても前述のベストセラー!?『ひとりぼっちを笑うな』やごくたまにトチ狂って(ここで怒るヒトの世界には『実話BUNKAタブー』は存在してないのでそう言わせて貰います)ブランド様とのコラボという衣類や蛭子リアリズムという展覧会を装った芸能人のイベントに出向き、関連する手抜きイラストや「金のためならなんでもいい」とされるがまま、の商品を買ってみたり、うっかりリトグラフを注文する、変態もいたりします。