木下 社会全体では、おそらくリベラルに近い考えの人のほうが多いと思うんですね。でも、大声でそれを説教しようとしたり、リベラルをこうだと規定しようとする人は嫌だという感覚も広がってると思う。上野千鶴子さんが「右翼だから女性でもダメだ」と高市さんを批判してましたけど、そんなことを大声で言い出したらオシマイですよね。だから、あの発言には女性からも反感が大きかった。上野さんはおそらく、リベラルな女性以外が首相になるという想定をしてなかったと思うんですね。
――土井たか子氏のような人が初の女性首相になると思っていた。
木下 だから、タカ派の女性が首相になるという想定外の事態に戸惑ったんだろうし、それをさらにフェミニズムの問題にしてしまった。それは悪手だと思うんですよね。左翼が嫌われてるのは、勝手に設計図を書いて、それに従わせようとするからですよね。「一緒に進む」「共に歩む」と言いながら、勝手に理想像を描いて進んでしまう。
――「先導してやる」というか。
木下 一般の人たちが感じている「通俗道徳」を認めたうえで議論すればいいんだけど、一貫して「こうじゃなきゃいけない」と人を縛るから、多くの人が拒否反応を覚えてしまうのは当然なんですよ。そのことが上野さんの発言とそれに対する批判にもつながっている。例えば、震災直後の東日本大震災直後の反原発運動は、「反原発」という大きなイシューの上に、リベラル側だけではなく、自民党を支持する保守的な人も乗っていましたよね。
――危機感によって大同団結していましたね。
木下 だからすごく寛容だった。でも、それがどんどん先鋭化して、モノトーンになって、「自分たち以外はみんなネトウヨでファシスト」みたいな膠着化が起きた。でも、現実には極端なネトウヨやレイシストなんて、1%もいないわけですよ。『月刊正論』を読んでる人も、参政党支持者も、大概は普通の人。場合によっては、リベラル側になったり、共産党支持者になってもおかしくなかった人たちだった。そういう人にレッテルを貼って攻撃するほど不毛なことはないですよ。全員がイデオロギーで動いてるわけじゃないし、保守的な感覚とリベラルな感覚は、多くの人の中で混ざり合ってる。安倍さんだって、安倍昭恵さんはリベラル側にも繋がってたり、家庭内でも様々な考え方があった。
――大麻産業を応援したり。
木下 そうそう。そういうもんなんですよね(笑)。
多様性よりも労働者からの共感
――以前はSNS上で「ネトウヨ」というレッテルがありましたが、最近では「リベラル」というレッテルもSNSでは散見されるようになりました。「ブサヨ」「パヨク」という言葉はありましたが、「リベラル」自体が蔑称化することには驚きもあって。2015年の安保法制反対運動では、国会前デモやSEALDsの設立など、リベラルに対する期待はすごく強かったのに、10年経つとこんなに概念が変わるのかと。
