第559回 元祖あゆ、いしだあゆみの演技力
2025年3月17日、イザワオフィスが、同社に所属していた歌手・俳優のいしだあゆみさんが、甲状腺機能低下症のため、3月11日に亡くなっていたことを公表。
アタシの周りでは「元祖・あゆ」として人気の高かったいしだあゆみさん。突然の訃報に、ゲイの友人たちもショックを受けていたわ。
アタシが物心ついたときには、すでに歌手業から俳優業に軸足を移されていたいしださん。アタシは、NHKドラマ『阿修羅のごとく』や映画『駅 STATION』などで、やや神経質そうで薄幸そうで翳のある女性を演じるいしださんを観て育ったんだけど、実は一番印象に残っているのが、2002年4月期にフジテレビ系で放送された『ウエディングプランナー SWEETデリバリー』というドラマでの、いしださんの演技。
このドラマは、タイトル通り、披露宴プランニング会社を舞台にした物語で(主演は、ユースケ・サンタマリアと飯島直子)、ウェディングプランナーたちが、さまざまな困難に遭遇しつつ、顧客たちの結婚式を成功させるべく奮闘するというお話。
いしださんは第6話のゲスト出演者で、「15年前に娘を置いて家を出た、新婦の母」という役どころ。最初は「今さら、捨てた娘の結婚式になんて出られない」と意地を張っているんだけど、本当は娘のことをずっと気にしていて、最終的には結婚式で、娘の花嫁姿を観て泣き崩れるの。で、年齢を重ね、かなりお痩せになったいしださんの容姿と役どころのマッチ具合、そしていしださんの泣きの演技があまりにも素晴らしくて、アタシも思わず号泣しちまったのよ。ああ、思い出したら、また観たくなっちゃった……。
なお、ほかにいしださんに関することで記憶に残っているのが、『ブルーライト・ヨコハマ』が大ヒットし、1969年に初めて紅白歌合戦に出場したときのエピソード。なんでもいしださん、最初はイヴ・サンローランのドレスを着て出場する予定だったんだけど、本番前にある大物歌手の楽屋に呼ばれ、「日本でサンローランを着ていいのは自分だけ」「アンタ、それ脱いで」と言われ、泣く泣く着替えたそう。