ちょっとややこしいですが具体的に言うと、表面はメイラード反応と呼ばれる効果であの「肉が焼けた香りと味」を出し、食べる人間の本能にガツンとアクセスするうま味を作り出します。内部の加熱はタンパク質が変性するギリギリの温度65度までに留め肉汁の流出を最低限にしっとりジューシーに仕上げつつ、あってはならない食中毒の危険を取り除く、という仕組みです。
で、焼肉です。ペラペラ肉をジューッ! あっという間に肉の内部温度は鬼上がり。肉汁はジャンジャン逃げ、パッサパサのクズ肉の出来上がり。じゃあ加熱しすぎに気をつけてと思ったら表面の焼け目は中途半端で香ばしさに欠け、もはや茹で肉と大差なく……って、なんじゃそりゃ。ありえません。
とは言いましたが、ペラペラの肉を美味しく焼くのは絶対に不可能というわけではないんですよ。ただし、それには卓越した技術が要求されます。あなた、それ、できるんですか? って話です。
こだわりの肉をウリにしている一流レストランのなかには、ロースト肉は2人前からしかオーダーを受け付けませんだなんて店もあります。それは塊肉のサイズが最低限以上大きくないと上手く焼けないという理由によるものです。
一流のプロさえも避けるペラペラ肉。なんでわざわざそんな酔狂なモンを並べて、素人が下手くそにジュージュー焼かなくちゃいけないのでしょう。本当に呆れる他ありません。
ていうか、そもそも、なんで私達は焼肉屋で、自分で肉を焼かなくてはいけないのでしょう。それっておかしくないですか? 次回はそんな話をしたいと思います。
【中編】食通「焼肉って本当にまずい料理」の真実:「素人に焼かせるなよ」「味しないでしょ」
【後編】食通「焼肉って本当にまずい料理」の真実 後編:「精肉店か、ちゃんとしたレストランへ行け」
文/御手洗フジヲ