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45本目・『悲しき口笛』:杉作J太郎のDVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画…連載75

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さて。その逃亡した原保美と津島恵子(こころやさしきひと)を山奥のダム発電所にかくまうのが神田隆である。小さい頃からの幼馴染み。明るくておおらかで快活な神田隆。後には悪役を演じることもあったがこの若き神田隆は素晴らしい好人物。街の悪者たちがエゴイスティックで性悪なぶん、この匿ってくれる旧友は絶対的にいいじんぶつでなければいけなかった。映画を見ているものにとってやっと辿り着いたオアシス、それが神田隆の演じる旧友なのだ。家城監督からもかなり厳しい指導があったのではないか。映画界に入ってまだキャリアも浅い神田隆はその期待に応えたすばらしい演技をしている。

まだ若い神田隆と原保美に見る我々のこころもあたたかくなる。湖に舟を浮かべておおらかに展開されるロケ撮影も若きふたりのこころにはしっかりと刻まれたことだろう。

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その『悲しき口笛』から20年後。

円谷プロ製作・TBS放送の『怪奇大作戦』20話『殺人回路』。

神田隆は原保美の旧友として登場する。

この神田隆、明らかに素晴らしい。明らかにおおらかで、のびのびしていて、欲のようなものがない。劇中「忠やん(ちゅうやん)」と呼ぶ原保美との関係もただごとではない。

ビルの屋上でたのしく語り合う神田隆と原保美。

このふたりの語らいや笑顔も見ているだけであたたかな気持ちになる。演技だとすれば凄い演技だがなにかこれは演技を越えたなにかがあるのではないかと私は思っていた。今回、『悲しき口笛』を見てよくわかった。

このシーンだけのためにこれだけの演技が成立したわけがないのだ。

人間は一日にしてならず。

未来の自分をそして未来の自分と誰かの関係性を作るのはいまの自分なのだ。

『悲しき口笛』、『怪奇大作戦』20話『殺人回路』もぜひ併せてご覧いただければ。いい話なんです。

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