「超女性優遇社会」の現実
実証研究によって、少なくとも賃金格差において女性差別と呼べるものはほぼないということが判明した。ちなみにゴールディン氏の主要な研究が発表されたのは1990年代であり、こうした知識は30年近くも前に経済学の一部ではよく知られていたことになる。
にも関わらず、「女性は差別されている!」というフェミニストたちの声はますます大きくなっている。最近日本でも東京工業大学が女子専用入学枠や女子専用奨学金を設けたことが話題になったが、実のところ海外では日本とは比較にならないほどの「女性優遇」政策が次々と実現している。その筆頭のひとつは教育分野だろう。特に欧米において大学教育は実質的に「女の領域」になりつつある。
日本における大学進学率は男女ほぼ同率だが、アメリカ合衆国やオーストラリアでは今や大学入学者の約6割が女性である。スウェーデンなど極端な国になると7割近くが女子学生になってしまうほどだ。これは先進国共通の傾向であり、男女の大学進学率がほぼ同率なのは日本、韓国、ドイツ、トルコなどごく一部の国しか残っていない。
こうした高等教育における女性偏重の背後にはAO入試に代表される「人物本位入試」の弊害がある。日本、韓国、ドイツのように、学力による選別を重視する国々では男女比率の極端な開きが生じにくいのだが、AO入試のような人物本位入試を採用すると新入生における女子比率が一気に高まってしまうのだ。これには様々な理由があるが、第一にはAO入試のような人物本位入試においては女子が男子よりも評価されやすい、という点がある。
つまりニキビ面のイガグリ男子高校生から「オレ、工学部に入ってメイドロボを創りたいんです!」とか言われても「うるせぇキモい氏ね」と思うだけだが、可憐な女子高生から「私、世界の環境問題を解消するために大学でエコロジーについて学びたいんです」と言われれば「うんうんなるほど合格!」という気持ちになるのが人情というものなのだ。ふざけているわけではなく、こうした現象は「Women-are-wonderful_effect」(女性って素晴らしいよね現象)として心理学的な研究対象にもなっている。
第二に、推薦入試に必要な内申点の獲得において、女子の方が男子より適正があるという議論がある。学校時代を思い返してほしい。成績のいい男子というのはしばしば教師に対して反抗的だったはずだ。内申点はボロボロだけどテストは常にトップ…というのが男子的な優等生だが、女子的な優等生は内申点(つまりは教師ウケ)と学力試験なら内申点の方に強い適正を示すことが多い。欧米のAO入試は高校の内申点の比重が重く、こうした面でも女子にとって優位なシステムとなってしまっている。