かつての格ゲー全盛期のゲーセンは、対戦台の向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、台パンや灰皿投げも当たり前の無法地帯だった。だが令和のゲーセンにはそんな殺伐とした雰囲気は感じられなかった。台パンする者も皆無。灰皿はそもそも置いてない。それはゲーマーの人権意識が向上したから…ではないと自分は考える。正しい歴史認識では当時のゲーセンの格ゲー界隈で暴力的行為が横行した理由の大半は「投げハメ」だったのだ。
『テコンダー朴』原作者白正男連載:第3回 ゲーマー・たぬかなによる低身長差別の問題の本質
「暴力よりも投げハメの方が悪い」という共通認識
当時のゲーマーの常識では、投げハメはこの世で最も重い罪。投げハメをする奴=ハメ野郎は極悪人であり、殴られて当然という空気が蔓延していた。ハメ野郎は単なる悪質プレイヤーではなく対戦格闘ゲームという生まれたばかりの新しい文化を破壊するパブリックエネミーだから、暴力を含むあらゆる手段での制裁が正当化されたのだ。
操作を誤って投げハメしてしまった場合は、レバーから手を放して相手に1回投げてもらうのが暗黙のルールだった。相手がレバーから手を離さなかった場合は台パン、台キックでわからせる。それでもわからない奴は、もう殴ってわからせるしかない。
もちろん当時も暴力は良くないという常識は存在したが、「暴力よりも投げハメの方が悪い」と格ゲー界隈ではみんな本気で思っていたのだ。今にして思えば頭がおかしいと言わざるを得ないが、投げハメを放置していたら対戦格闘ゲームという文化は滅んでいたかもしれない。そう考えると文化破壊者に対する暴力制裁は必要悪であり「義挙」であったと言えるかもしれない。
投げハメの問題は94年に稼働開始した6作目『スーパーストリートファイター2X』で「投げ受け身」が実装されてようやく解決した。『スト2』の時点で投げハメの存在は明らかになっていたのに、カプコンは3年間も放置していたのだ。つまり91年から94年の3年間にゲーセンで発生した暴力事件は全てカプコンの責任であることは確定的に明らか。ヘイト企業■プコンは謝罪しろ!
文/白正男
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初出/実話BUNKAタブー2024年3月号
PROFILE:
白正男(はく・まさお)
職業:義士、漫画原作者。出身成分:核心階層(抗日戦士)。正しい歴史認識と人権思想を啓蒙するため、本誌連載作品『テコンダー朴』の原作を担当。