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インタビュー 漫画喫茶暮らしから作家デビュー異端の作家・赤松利市とは?

赤松利市 インタビュー
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赤松利市の小説には、東日本大震災の被災地となった東北を舞台としたものが多い。

莫大な復興マネーに溺れていく被災者を描いた『藻屑蟹』、精神障害の娘を抱える男が色と欲で破滅する『ボダ子』、そして3月に刊行された最新作『アウターライズ』。

『アウターライズ』では、再び大地震に見舞われた東北の人々が災禍を乗り越え、日本から独立し「東北国」を築いていく姿を通して、社会のあるべき形を問うている。

今作にも、赤松が体験した東北の実情が反映されたという。

「自分が被災地で作業員をしていた時も、末端の労働者は理不尽な差別を受けるのは当たり前でした。作業中怪我しても、救急車にも乗れないし、まともに人間扱いされない。でも大きな視点で見ると、東北全体が中央に差別され、搾取されていることも実感しました。商店街は大手資本のショッピングモールの進出で衰退し、進出してきた大企業の工場では、東京とは比較にならない低賃金で人々が働いています」

小説の核となる東北が独立するという発想も、自身の体験が影響した。

「自分が国の進める復興に一番疑問を抱いたのは、被災した17の自治体の復興計画に目を通した時に、どの自治体も金太郎飴のように同じ内容だと気付いたことなんです。予算を得るためには国が納得するメニューじゃないとダメだから、画一的なものになる。地域の独自性を活かした復興計画であるべきなのに、結局それを国が許さない構造があるわけです。実際、当時複数の人から話を聞くと『日本政府は自分たちを安価の労働力としてしか見ていない。だから復旧はしても復興させる気はない。結局、東北は独立する以外にない』という切実な声ばかりでした。実は小説の東北国の中心人物にも実際のモデルがいます。読む人が読めばすぐにわかりますよ」

作中の「東北国」は、多くの国民が貧困に苦しむ現在の日本と対称的に、富の再分配が行われ国民が国家により大切にされている。

「そもそも今の日本の姿がおかしいんです。非正規雇用が増えて、安定した収入を得ること自体が困難になっている。消費税も増えて、年金の支給は延長され、多くの人が死ぬまで働き続けないといけない。こんな国で若者が希望を持てるわけがありません。『東北国』はそんな今の日本に対するアンチテーゼなんです。ちなみに『東北国』の国家像は、私の生涯の一冊といえる『モモ』を書いたドイツの児童作家ミヒャエル・エンデの思い描いた国家像を参考にしています」

赤松にとって『アウターライズ』は被災地を描く最後の作品だという。

「被災地を描く小説は昨年4月に刊行した『ボダ子』で最後にするつもりでした。自分が被災地を離れてすでに数年が経ちますし、その場所にいない人間が書いていいほど安易なものではないと思っていましたから」

では、なぜ今回の刊行に至ったのか。

「実は『アウターライズ』は、『ボダ子』よりも前に執筆していたんです。宮城県石巻市での3年半の土木作業員、福島県南相馬市での1年半の除染作業員、風俗やファミレスなどの店員をした東京での1年と都合6年かかって書いて、元々発表予定はありませんでした。ですが日本の社会がより酷くなった実感もあり、小説で描いた理想国家『東北国』を通じて、世間に『今の日本はおかしくないですか?』と問いかけたくなったんです。この作品を読んで、今の日本はこのままでいいのか、考えるきっかけにしてほしいです」

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