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インタビュー 漫画喫茶暮らしから作家デビュー異端の作家・赤松利市とは?

赤松利市 インタビュー
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書くこと以外はもういい

デビュー以来、意欲的に作品を発表し続ける赤松へのオファーは後を絶たない。今現在で、2年以上先まで仕事は埋まっているという。

「先ほど話した自己責任論をテーマにしたエッセイの他にも、書きたいテーマや作品の構想はたくさんあります。現在考えているのは、貧困女子を主人公にしたバイオレンス作品。それとアセクシャル(無性愛)やカニバリズム(人肉を食す行為・習慣)などの難しいテーマにも挑戦したいと思っています。さらに現代へのアンチテーゼとして、昭和30年代の日本を舞台にした作品も書きたい。昔は、みんな貧乏でしたが貧困ではなかった。これを主張する作品を書きたいと思っています。当時は経済的には貧しくても人間関係はけっして貧しくなかった。今の若い人には想像できないでしょうが、昔の田舎はみんな仲が良かった。会社の社長でも肉体労働者でも関係なく、銭湯に集まって和気藹々と会話する今では考えられない景色があったんです。それを書こうと思っています」

デビュー後も漫画喫茶を寝床にし続けてきた赤松は、コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年2月に漫画喫茶を出てアパートに移り住んだという。インタビューの最後、作家を続けるうえで、心掛けていることについて訊いた。

「生活面では寝る時間を削らずに絶対に確保することが一番。それともう一つは、常に自分自身に『自分にしか書けないものは何か』と問いかけること。他の人が書けるものではなく、自分にしか書けないものを書く。そういう意識を持ち続けていきたい。売れるか売れないかはあまり考えないようにしています。贅沢はこれまでの人生で沢山してきたから、書くこと以外はもういいんです」

取材・構成/坂田努
撮影/岡崎隆生
初出/実話BUNKAタブー2020年6月号

インタビュー 漫画喫茶暮らしから作家デビュー異端の作家赤松利市とは?
PROFILE:
赤松利市(あかまつ・りいち)
1956年(昭和31年)、香川県生まれ。関西大学文学部卒業後、大手消費者金融会社に入社。退社後、35歳の時に独立して起業。その後、被災地で土木作業員や除染作業員となるが、仕事に行き詰まり、東京・浅草へと流れ着く。2018年に『藻屑蟹』で第1回大藪春彦新人賞を受賞。2019年に『鯖』が第32回山本周五郎賞候補に。2020年に『犬』で第22回大藪春彦賞を受賞。
Twitter:@Mr6Xwb

 

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