あとヒュー・グラントが演じるフォージが本当に小悪党なのに憎めない感じでいい。よく考えると、大量の領民の命と引き換えに宝を盗み出して逃げようとしたり、極悪非道かつスケールが小さい行動をとるのだが、あの、さわやかでうざったい笑顔を見ていると何となく愛せてしまう。いや、失敗したから良かったものの、あれ本当に極悪だからね…。しかし、笑顔が素敵なのだ! ちょっとどうかしているレベルの裏切りや悪事を働きながらも憎めない可愛いサイコパス犯罪者、それがフォージ!
そんなフォージの失礼な言動にストレスを貯めていた悪の国サースから派遣されていた悪の魔女・ソフィーナ。全体的に非人間的で不気味な印象が強い彼女だが、フォージに苦しめられてる時の彼女や、フォージに対する怒りを激白する彼女は何か可愛かったです。
好きな脇役も何人もいる。物語中で一番不憫な鳥人間のジャーナサン。ホルガの元配偶者マーラミンとその現配偶者がみせる善良さと優しさ。魚の口から助け出される猫人間の赤ちゃんの可愛さ。猫人間の赤ちゃんがお母さんのとこに戻れて本当に良かった! しかし、あの赤ちゃん可愛かったな。
ラストも伏線(というか投げっぱなしだったネタ振りというか)を回収していて無駄なところが全くなく、ケチの付けようがないバランスのいい作品だ。自分の本来の好みだとバランスが悪い、凄く良い部分とダメな部分が混在した映画を好きになりがちなのだけど、ちゃんとした面白い作品はやっぱり面白いというべきなのではないかと思う。そういうところをちゃんとしてないと、逆張りに走ってダメな奴になってしまうと思うので。
サブカル中高年にありがちだけど、みんなが褒めているものを褒めるのは恥ずかしいとか、かっこ悪いとか思う人もいる。でもそれは人気がないものはつまらないに違いないと思って見ないようなことと表裏一体であり、みんなが褒めていようが褒めていまいが、人気があろうがあるまいが、自分が面白いと思ったものは面白いと言うべきなのだと思う。
映画『 ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』は本当に面白かったし、よくできた映画だったし、何よりダメだけど魅力的な連中が頑張って生きてる姿を生き生きと描いた作品だった。
〈隔週金曜連載〉
画像/作品ポスター
PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
twitter:@punkuboizz