PR
PR

58本目・『0課の女 赤い手錠』:杉作J太郎のDVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画…連載101

連載
連載
PR
PR
世界のどこに行っても見て気分の悪くなる人はいるだろうが見て興奮する人はいる。変態かもしれない。が、それよりも、これが映画でありこれが芸術であるとも断言できる。ま、わかりやすく言えばタランティーノやロバート・ロドリゲスがこの映画を見てないとは思えないし間違いなく影響下にある。
この映画が作られた頃、日本映画は二本立て興行時代であった。映画館に行くと新作が二本、上映されていた。この映画を私はギリギリ封切で見ていないがおそらく併映作品であろう。出演者クレジットの止め(最後に名前が出る特別扱い、または特別出演的な存在)が丹波哲郎であるから小さな作品というわけではない。ロケもあればセットも頑張って作って在り出演者もまあまあである。豪華とまでは言えなくても〈郷鍈治、荒木一郎、室田日出男〉という出演者クレジットの二枚目登場メンバーはなかなかの顔ぶれである。だが、ま、やはり二本立ての表(二本立て興行はどちらかがメイン、どちらかが併映作、というスケールの大小がある)の映画ではないだろう。
PR
〈暴力〉と〈セックス〉が荒々しく、冷酷に、愛とか情とかまったく関係なくフィルムに焼きつけられている。
目をそむけたくなる人も多いだろう。
気分が悪くなったり、夜、眠れなくなったりする人もいるだろう。
この映画は突然出現することは不可能である。
この映画が作られた頃、前述の〈暴力〉と〈セックス〉が全国の繁華街の一等地にあった東映の映画館では連日連夜、一年中、上映されていた。〈暴力〉と〈セックス〉の合間に一休さんとかアンデルセンとかの〈東映まんがまつり〉を挟みながら。
〈暴力〉→〈セックス〉→〈まんがまつり〉→〈暴力〉→〈セックス〉→〈まんがまつり〉
世界にただひとつの映画製作そして配給会社ではなかったか。イタリアあたりにありそうな気もするが。
とにかく、とんでもない作品が誕生するにはそれなりの背景というか下地はかならず、ある。
ちなみに2025年現在。
背景というか下地というか、こんなお寒い時代もないのではないか。これでは芸術は誕生しにくい。次回につづく。

『0課の女 赤い手錠』(1974年・東映東京)

出演/杉本美樹、郷鍈治、室田日出男、荒木一郎、三原葉子、岸ひろみ、小原秀明、戸浦六宏、遠藤征慈、河合絃司、土山登士幸、菅野直之、藤山浩二、関山耕司、佐藤晟也、久地明、ロルフ・ジェイサー、団巌、森祐介、相馬剛三、小甲登枝恵、鈴木曉子、松本初代、谷本小夜子、竹村清女、久保伊都子、宮崎あすか、横山繁、田沢祐子、高島志敏、山田甲一、佐川二郎、木村修、畑中猛重、丹波哲郎
企画/吉峰甲子夫
原作/篠原とおる
脚本/神波史男、松田寛夫
撮影/中島芳男
録音/小松忠之
照明/大野忠三郎
美術/桑名忠之
編集/祖田富美夫
助監督/澤井信一郎
進行主任/堀賢二
スチール/加藤光男
記録/宮本衣子
擬斗/久地明
音楽/菊池俊輔
主題歌/「女の爪あと」(CBSソニー)杉本美樹
監督/野田幸男

※10月4日、杉作さんの新刊『あーしはDJ』(イーストプレス)が発売されました!

<隔週金曜日掲載>
画像/『0課の女 赤い手錠』のBlu-rayパッケージ

PROFILE:
杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
twitter:@OOKAMINOHAKABA

↓連載記事はこちらから↓

タイトルとURLをコピーしました