家族を殺した鬼に対する復讐、和テイストの世界観、鬼と戦う組織・鬼導隊など『鬼滅の刃』を髣髴とさせる設定の多い作品であるが、『鬼滅の刃』発表以前に連載が開始された作品であり、時系列的にはこちらが古い。
昔の高橋葉介を髣髴させる怪奇でデカダンな美しい絵柄と、『うしおととら』を思わせながらもどこかダウナーなムードが光る、もっと評価されてもいい作品だ。
フクイタクミの『ケルベロス』(2010年/秋田書店)は独特な魅力を持つ作品である。
旧校舎に封じられていた人間を喰らう8匹の化け物・崩を偶然解き放ってしまった少年・十三塚景は、崩(形なき獣)と戦う力を持つ「墓守」へ人を変えさせる狗骸・雪房と契約し、崩と戦うことを決意する。
『うしおととら』の『週刊少年チャンピオン』的解釈というか、王道のバトルストーリーにショタ、リョナ、ケモナー、各種傾向の女性キャラたちといった作者のフェティシズムが濃厚に反映された結果、非常に奇妙な空間が生じてしまっている。
雪房は普段は景の学生服に宿っているのだが、その姿には変な可愛さがある。墓守になった人間がたどる過酷な運命など、雪房は大事なことを教えてくれない傾向があり、隠し事の多い奴である。それゆえ、自分に素直に感謝してくれる景に対してひけめを感じており、ウジウジしがちなのだが、何か可愛いので問題ない。
景の出生の秘密、真のラスボスが登場と物語が佳境にさしかかったところで連載終了。実質未完であるが物語、キャラデザイン共に捨てがたい魅力がある作品だ。
『スプリガン』『ARMS』の皆川亮二による『ヘルハウンド』(2022年/講談社)は現在連載中の裏返しの異世界転生SF。