317回 忘れじの火野正平
突然飛び込んできた火野正平の訃報。最近は、NHK・BSの番組『にっぽん縦断 こころ旅』で自転車に乗って旅をしている印象が強く、まだまだ元気だと思っていただけにショックだった。
火野正平は小中学生時代のヒーローの一人だった。夏休みに昼間やってた必殺シリーズの再放送が彼のことを意識した最初だったと思う。彼が演じた正八(正十)は、いわゆる主人公タイプのキャラクターが好きでなかった私にとって非常にお気に入りのキャラクターだった。ちなみに私が他に好きだったキャラクターは『秘密戦隊ゴレンジャー』のキレンジャー(理由は自分もカレーが好きだから)、『忍者キャプター』の雷忍(チャップリンみたいな恰好で面白かったから)、『機動戦士ガンダム』のカイ・シデン(屈折しているところとミハルとのエピソードが好きだから)といった感じである。
いわゆる熱血漢タイプの持つ、ある種の押しつけがましさ、デリカシーのなさが苦手だった子供時代の自分にとって正八は安心させられる心地良い人物だった。
腕っ節は弱くて、荒事では頼りにならない。お調子者でいつもフラフラとしていて、ちょっと屈折している。女好きでいつも女性をからかっている。そんな風でいて繊細でよく悩むし、すごく優しい人間。
『新・必殺仕置人』『江戸プロフェッショナル・必殺商売人』の正八と、『翔べ!必殺うらごろし』の正十は同一人物であるかは不明なのだが、キャラクター的にはほぼ同じ。鮎川いずみ氏演ずるおねむとの絡みが楽しみだった。
『新・必殺仕置人』の中村主水や念仏の鉄も根底では優しいのだが、やっぱり感情を抑制できるシビアでハードな一面があって、そういった大人の男然とした連中とくらべると、正八はその時の気持ちが素直に出てしまうところがあった。そういった割り切れなさが魅力な部分が魅力の一つだった。