「歌舞伎町の女王」は現実の歌舞伎町とは関係なかった
そういえば、ヘルプマークの件は所属レコード会社であるユニバーサルミュージックが独自に企画立案したものであるという説明がユニバーサルミュージックからなされているが、オフィシャルグッズをアーティストの確認なく制作することはありえないことで、それが事実だとしても、少なくとも確認はしているはずで、その時点で気付かないとしたらダメだし、レコード会社ではなく本院が声明を出すべきだったと思う。
以前から度々批判されていたわけで、昔からやっているのにいまさらという意見もまちがっているし、椎名林檎が急にこういうふうになったと思っている人も間違っている。
そういうわけで、椎名林檎という人の政治的志向について取り沙汰されているわけだが、私は彼女は基本的にノンポリであると思っている。というか、本人の主観を別にすれば、政治的問題、社会的問題、歴史的問題についてちゃんと取り組んだことのない人なのではないか。
椎名林檎のCDデビューは1998年。一般的知名度を獲得した「本能」がリリースされたのが1999年。
雑誌が中心の90年代悪趣味系/鬼畜系サブカルブームが全盛期を終えて終焉を迎えようとしていた時期であり、鳥肌実が人気が急成長しようとしていた時期であり、悪趣味系/鬼畜系サブカルが提示していたものの中でコアだったものは衰退したものの変質や希釈をされながら拡散・浸透していた時期である。
当時、椎名林檎が愛車にヒトラーと名前を付けたり、日本共産党とかかれた拡声器をライブで使っていたことが知られているが、これはそれらを支持していたことにはならない。
露悪的なものや「反社会的っぽい」ものがカッコいいもの、とがった表現として支持される空気もあった時代の反映であって、単にカッコいいと思ってやっているに過ぎない。
愛車・ヒトラーは2000年の「罪と罰」MVで爆破されるわけだが、本気でヒトラーを愛してたならそんなことをやらないであろう。
この人は「戦前」「昭和」を思わせるビジュアルイメージを多用してきた人であり、歌詞も古い漢字表記や古語を多く取り入れているが、ビジュアルイメージもなんとなくの雰囲気はおさえているもののどういう時代のイメージなのか漠然としているし、古語の使い方も文法上誤りが多くみられる。あくまで疑似「懐古趣味」なのである。