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椎名林檎とノンポリとサブカルと:ロマン優光連載354

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このように彼女のそういった表現には雑なところがある。

拡声器に関しても、あれは新左翼・全学連の活動家のイメージが投影されているはずだが、書かれている文字は日本共産党。

彼女が題材としたようなものを扱ったアーティストは椎名以前から存在していたが、戸川純がゲルニカやソロ活動で表現した戦前「大正」「戦後」といったものは、それぞれ解像度が高いものだった。ザ・スターリンの扱った学生運動・共産主義に対する言及は対象に対する理解と批評性の強いものだ。

先人のそれと比べ、表層的でカッコいいことだけを重視したものだったことは言えると思う。

基本的に自分の美学にそった表層的なかっこよさだけを表現しがちな人であり、「NIPPON」の歌詞についても、サッカー日本女子代表を応援する曲という発注に対して、自分の美意識をもとに盛り上がるカッコいい歌詞にしようとしたら、ああなっただけなのでは。カッコいいとかしか考えてないから、政治的な意識があれば避けたような表現を不用意に入れてしまった。そういうふうな気がしてならない。あれは隠喩とかではなく、雰囲気だけでやるからああなったのではないか。そういえば、この人は世界観とか自作に関する反応について、なにかにつけて思わせぶりなことは言うけど具体的なことは言わない人だ。

「歌舞伎町の女王」は現実の歌舞伎町とは関係ない、想像上の歌舞伎町の歌であり、想像上の古い盛り場のイメージを歌舞伎町に持ち込んだものだし、新宿系という言葉は渋谷系のもじりでしかなく、内実が反映されたネーミングだった渋谷系に比べて内実というものはなく、なんとなくカッコいいだけである。

ポップミュージックにおいて表層のカッコよさは非常に重要なものであり、椎名林檎の方法論が間違っているというわけではない。ただ、そういう方法論の人というだけの話だ。

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鳥肌実と同類のノンポリ

2016年に当時・山谷えり子が会長をつとめるなど右派議員が多く在籍し、日本会議と関係の深かった自民党の「文化伝統調査会」に彼女が招かれ講演をおこなったことがあった。

当時、まだ「NIPPON」はテーマ曲としてつかわれており、同年のリオ五輪閉会式では音楽監督を務め、「君が代」をアレンジして使った。そういう流れからの評価で呼ばれたのだと思う。そういえば、オリンピックに批評的な作品である野田秀樹演出の舞台『エッグ』(2012年)の音楽監督を務めた際に提供した自身の曲「望遠鏡の外の景色」も使用しており、本人から意図が伝えられていないために、色々な解釈をされていたらしいが、この人は自作の世界観とか自作に関する反応について、なにかにつけて思わせぶりなことは言うけど具体的なことは言わず、それによって物議をかもすことを好む人である。今回のことについても、そうなのだろう。

これを椎名林檎の政治思想の反映とみるむきもあるが、逆に政治的な信念がとくになければ、芸能人なら与党の主催する会によばれたら普通に参加すると思うし、特にそういったことの証明にはならないと思う。

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