人がたくさん死ぬ戦争を起こす権力者のことも、カネごときのために人を殺す強盗殺人犯のことも、普通の人には理解できない。しかし、それらがなくなることはない。
13回:サルには人間の言葉が届かない
詩人で翻訳家の谷川俊太郎が『生きてるってどういうこと?』という本を出した。谷川は現在92歳。この作品についてのインタビュー記事が面白かった。
冒頭から谷川は身もふたもないことを言う。
《僕が育ったのは、小さなころから戦争が始まっていて、小学生から中学生にかけて東京が空襲されて焼け野原になっていた時代です。戦争のリアリティは、小さなころから知っていました》
《だから、今、ウクライナとロシアが戦争をしていても、当たりまえのことのようにして見ちゃいますね。戦争は嫌なんだけれども、これは人間の運命というか、宿命みたいなもので、戦争はいくら未来になっても終わらないだろうという感じを持っています》
《一種の諦めのようなものなんだけれども、そこにあるリアルな感じを持っていた方がいいんじゃないかと思います。人間はやっぱり争うからね、勝負ごとが好きでしょう? 年を取ったら、いろいろな事件が起こっても、もう平気になっちゃいましたね》
この谷川の気持ちはすごくよくわかる。「そんなことを言ってはいけない」「諦めたらそれで終わりだ」と言いたがる人は多い。しかし、長く生きていれば、人間はピンキリであることもわかる。つまり、きわめてきちんとした人間がいる一方で、サル以下の人間も多く、結局、サルの餌付けがうまいだけの連中が権力を握ることになる。
先日は、プロレスラーのラーメン店主が、迷惑客の多さを嘆いていた。「380円のデザートを頼んで、それを10人で分けて食べる客」「焼酎をダブルで注文し、ダブルの料金を取られたとネットに苦情を書き込む客」……。もっとひどい客もいたらしい。「もう世の中には考えられないようなことをする人がいるってことですよ」と店主は言う。