強盗殺人も理解できない。かたき討ちや痴情のもつれならまだわかる。でも、カネのために人を殺すという感覚は、普通の人には理解できないだろう。にもかかわらず、強盗殺人は毎年のように発生している。
つまり、「考えられないようなことをする人」がすぐ隣りにいるのが「この世」である。こうした連中を説得するのは原理的に不可能だ。サルには人間の言葉が届かない。
谷川は言う。
《ある程度の年齢になると、若い人とはまったく発想が変わるんですよ。諦めてもいい、絶望してもいい。そういったマイナスの価値が認められるようになる。言ってみればすごく自由になっているんです》
《自分が感じることは全部リアリティがあるんだと思うようになり、「こういうふうに感じちゃいけない」とか「こんなことは思っちゃいけない」といったことがないんです。今や「何でもありだ」と思うようになっていますね》
私も「それでもバカとは戦え」というコラムを「日刊ゲンダイ」に書いているが、バカと戦っても基本的には無駄。徒労。だからといって、絶望するほどおぼこでもない。結局、「どうでもいい」という言葉が一番しっくりくる。
画像/谷川俊太郎『生きてるってどういうこと?』(光文社)
初出/実話BUNKAタブー2024年9月号
【プロフィール】
適菜収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。大衆社会論から政治論まで幅広く執筆活動を展開。『日本をダメにした新B層の研究』(K Kベストセラーズ)『ニッポンを蝕む全体主義』(祥伝社新書)など著書多数。
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PROFILE:
適菜収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。大衆社会論から政治論まで幅広く執筆活動を展開。『日本をダメにした新B層の研究』(K Kベストセラーズ)『ニッポンを蝕む全体主義』(祥伝社新書)など著書多数。