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発狂を逃れているのは絵のおかげ:適菜収連載8

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上野の美術館の特別展を見た後、国立西洋美術館の常設展に必ず寄ることにしている適菜氏。常設展のすぐれているところは、いつも同じ場所に同じ絵があることだという。

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8回:発狂を逃れているのは絵のおかげ

日本も完全に没落したが、美術館の特別展に行列ができていたりすると、少しは底力を感じる。上野には国立西洋美術館、東京都美術館、上野の森美術館などが集結しているが、特別展を見た後は、西洋美術館の常設展に必ず寄ることにしている。

常設展のすぐれているところは、いつも同じ場所に同じ絵があることだ。もちろん、入れ替えたり、貸出したりしているときもあるが、待っていれば戻ってくる。

先日常設展に行ったら、しばらく見かけなかったクロード・モネの「黄色いアイリス」が元の位置に戻っていた。これは常設展ではベスト3に入る私が好きな絵。あと2つは、フィンセント・ファン・ゴッホの「ばら」、ピエール=オーギュスト・ルノワールの「木かげ」。ニーチェは超人という言葉を使ったが、いずれも人類が高みに上り詰めたことを示す作品である。

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常設展で毎回思うことは、「毎回思うこと」が同じであるということだ。絵も不動ならば、それを見たときの思考のパターンもそれほど変わらない。

常設展の入口は、スロープで2階にあがるようになっているが、毎回、「これまで何回来たんだろう。死ぬまでにあと何回来れるだろう」と感じる。多分、これまで200回以上は行っている。

最初のフロアは宗教画が多い。私は宗教画のよさがよくわからないので、流し見するか、パスする。エル・グレコの絵を見ると、毎回「◎◎ないな」と思ってしまうが、「素人が何言ってやがる」と反発を買うかもしれないので、伏字にしておく。

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