免許なしでは生活が成り立たない
高齢者や、老境に入った親を持つ人々が頭を悩ませる、「車の免許どうする?」問題。
高齢者の運転する車が逆走した。アクセルとブレーキの踏み間違いだ。そんな報道があるたびに自主返納の圧力が吹き荒れるわけだが、車がないと生活が成り立たないのが多数派の実際なのだから、彼ら彼女らが免許を更新しようとするのも当然のことだろう。
そしてそこで話題となるのが、認知機能検査というわけだ。
落ちる人はほとんどいない検査
認知機能検査が75歳以上に義務づけられたのは2009年のこと。免許更新時に検査が必須となり、不合格となると医師の診断、そこで認知症と判断されれば免許は更新できないという仕組みになっている。
ところが警察庁によると、この検査の合格率は96~99%。つまりは実際認知機能検査で不合格になる受験者はほとんど存在しないということだ。いったいどういうことなのだろう。
「出題される問題が公表されているんですよ。しかも対策本が出回ってるんだからそりゃ受かる、って話なんです」と語るのは自動車・交通関係に詳しいライターのA氏。
「基本的にはずーっと、同じ問題が出てます。ひとつはいくつかのシンプルな絵を覚え、ヒントを頼りにその記憶を思い出すもの。もうひとつは受験時の日時を答えるものです。対策する云々の前に難易度自体もかなり低い」
なんでも、実際に出題される問題の種類は4パターンしかなく、それらは公にされている。ざっと見て覚えておけばほぼほぼ合格できるという。
「そう聞くと初見でも受かる。そう考える人は多いでしょうね。そして『じゃあおれは対策本は買わなくていいや』と判断して失敗する人がけっこう多いんです。正直、対策本は買うことをおすすめします」
それは、なぜ?
対策なしではアタフタ恥をかく可能性
「なんといいますか、問題文が分かりづらいんですよ。独特のまだるっこしい文体です。それを緊張感のなかで読むと、実に意味を取りづらい。何十年もテストの類と無縁で生きている高齢者が試験会場で血の気が引くような思いをするのも無理ないでしょうね。事実、なんとか検査はくぐり抜けたものの『自信をなくした』『急に運転が怖くなった』と意気消沈、日常に支障をきたす高齢者は少なくありません」