PROFILE:
木下ちがや(きのした・ちがや)
徳島県生まれ。明治学院大学国際平和研究所研究員。労働組合勤務、学生自治会活動などを経て一橋大学社会学研究科後期課程満期退学(社会学博士)。脱原発運動など社会運動に参加。単著に『ポピュリズムと「民意」の政治学 ― 3・11以後の民主主義』『「社会を変えよう」といわれたら』『“みんな”の政治学』がある。Xアカウントは「こたつぬこ」(@sangituyama)。

自民党の遺産を食いつぶす政権
――10月27日に行われた産経・FNN合同世論調査では75.4%、11月2日のJNN世論調査では82.0%と、高市内閣は非常に高い支持率を獲得しています。木下さんはこの現状についてどのように感じられますか?
木下ちがや(以下、木下) 高市総理は先の二つの国政選挙で自民党から離れて、国民民主党や参政党へ流れていた右派支持層を呼び戻しています。ただ、支持率の高さの最も大きな要因は、党派を超えて「女性総理」に期待している層を取り込んでいる点です。実際、調査によっては共産党支持者の半分以上が高市さんを支持しているし、保守層とリベラル層、双方の支持を得ている。ただ、政権の体制そのものは極めて不安定です。まず公明党が連立を離れて、維新のような半グレ集団を与党に入れてしまった。さらに石破政権の時の主流派を追放した。つまり高市政権は前体制を否定する革命的な政権なんですよね。安倍政権は支持率はさほど高くなかったけれども、組織戦で選挙を勝ち抜くことで党内を結束させていた。でも、高市さんは派閥の長の経験はなく、党内基盤が弱いにもかかわらずバランスを欠いた人事をやることで、内部に敵を増やしている。自民党内は今後内ゲバの様相を呈してくることになると思いますね。
――石破前首相も公然と高市批判を始めていますね。
木下 高市さんをバックアップした麻生さんだって、自分が返り咲くために高市さんを支持しただけ。そもそも高市さんを軽視してると思います。
――それはなぜですか?
木下 高市さんが叩き上げだからですよね。麻生さんはサラブレッドしか好きじゃない(笑)。でも親のすねかじりじゃなくて、自分の力で政治家になった叩き上げの女性首相である高市さんを、世間は「通俗道徳」的な心情で支持してる。これは非常に健全な感覚だと思う。ただ、現状はその高支持率に依拠して政権を運営するしかないから、行き当たりばったりな政策を打ち出している。おそらく1月に解散して、与党を安定化させないとズルズルと後退していくんじゃないでしょうか。
――ただ、自民党の支持率自体は微増で、公明党の連立離脱もあり、選挙は危険だという意見もあります。
木下 「自民党をぶっ壊す」といった小泉純一郎さんは、支持率を背景に選挙では勝ったけど、党員は激減し、後を継いだ第一次安倍政権は大コケし、結果的に民主党の政権交代への道をひらきました。第二次安倍政権ではそれを反省し党員を増やそうとしたんですが、そしたらネトウヨがたくさん入ってきてしまった。その意味では、高市政権は小泉政権の悪いところと第一次安倍政権の末路をミックスしている。だから、自民党の遺産を食いつぶしながら延命する政権だと思うし、このままだと自民党は高市さんで終わりを迎えるかもしれない。
――実際に、高市政権の支持率はピークアウトしたという分析もあります。それは、村山談話の継承などに対する右派の失望、対中関係への発言に関するリベラル派の離脱など、様々な要因が言われていますね。
