食後にこれは実はラム肉ではなく犬肉だと明かしたが、「えーそうだったの」とさして驚かなかった。元々、動物は愛玩するものではなく食べるものという認識だから犬ごときで本気で驚いたりはしない。
それよりその時すでに気持ちはカジノへ飛んでいたから、犬肉だよと聞いたところで馬耳東風、どうでも良かったのだろう。
ジビエ鍋の無言に関してはもはや鹿ときいても猪と聞いてもにわかにどんな動物だったのか浮かばなかったとも思える。ましてやキョンやハクビシンなどは何だか分からない、いやそもそもジビエが何を指すかも分かりも分かろうという気もないのだろう。
デザートの饅頭やケーキの類はうまそうにバクバクと食べた。
テーブルを囲んだ全員満腹である。ではそろそろ、と、皆が立ち上がったときに蛭子さんが「じゃあカツ丼食べに行きましょう」と言ったように聞こえたのは…んまあ、私の空耳でしょうきっと。
余談ですが。この私のジビエ鍋の感想はと言えば。
まず、鹿肉は元々好きなのである。
高校生の時に北海道大雪山のトムラウシ温泉というところへ友人達と行ったのだが、鹿肉のたしかステーキと記憶するがうまくて、それ以来印象が良い。今も神戸に行くと好きな鹿肉料理専門店がありそこで鹿を食べる。猪も鍋にするとうまい。が、群馬県上野村のイノブタはかくべつ。キョンはちょっとキツかった。ハクビシンは味そのものより、沢山糞をしてかたまりをつくるという先入観からちょっと抵抗がありそこに負けた。だが、ハクビシンは種ごと果実を食い未消化のまま糞をあちこちにして種をまきちらすので害獣のように目されながら、実は自然の「回復」には有益な動物だそうです。
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最後の展覧会:根本敬の「蛭子能収タブーなし!但し『ぼぼ』は禁句」連載2
PROFILE:
根本敬(ねもと・たかし)
特殊漫画家、エッセイスト。1981年に、『月間漫画ガロ』で漫画家デビュー。代表作に、漫画では『生きる』『怪人無礼講ララバイ』『龜ノ頭のスープ』、活字本では『因果鉄道の旅』『人生解毒波止場』など。