いやこれヤバいのは寅蔵じゃなくて周囲の人間だよな…ですが、犬のように受け入れていく寅蔵がヤバいんですよ、SMストーリーとはいえ。最初に犯された義父が痩せ衰え死の床につくと、寅蔵は陰茎を吸引して看取るのです。狂ってます。ノンケに変換して考えると美人で巨乳で頭の弱い女が犯され続けて思考も放棄して性奴隷化しまうという完全アウトなストーリーですが、いいんですよ同性愛だから。何より田亀先生の手塚治虫『奇子』+横溝正史+レディコミ+五社英雄を目指した高みが素晴らしいです。ちなみにこれはゲイ雑誌バディに連載されてた作品ですが、当時バディ編集者だったマツコ・デラックスを明らかにモデルにしたお松というデブの女中が出てきて笑えます。
田亀源五郎先生は伝説のゲイ雑誌さぶ出身ですが、同じくさぶ出身でもう1人。山田参助先生の『あれよ星屑』の黒田門松です。昭和の特に戦前戦後付近を異常に偏愛されてる山田先生、あまりに趣味性が強いのが欠点かも…と失礼ながら思っていたのですが、趣味も完成度を高めれば当時のクオリティすら凌駕するんだ、と感服させられた代表作です。黒田は別に肛門レ◯プされたり臨終フ◯ラするわけではなく特にヤバいとこはないのですが、個人的にかわいくてヤバいというだけです。黒田のキャラはおそらく兵隊やくざの勝新太郎が下敷きになっていると思いますが、頭の中での実写化はどうしてもシベリア超特急のぼんちゃんになってしまいます(好きだった…)。
最後のヤバいキャラは弘兼憲史先生『黄昏流星群』の『星田一夫さんの幸福』。もともと弘兼憲史先生は初期の課長・島耕作を読めばわかるようにおフェミ様に焚きあげられても仕方ない男根主義です。そいつが中年弱者男性を描けばどうなるのか? の答えがこのヤバい作品。真面目でどんくさく女に全くモテない星田一夫さんがラブドールと本気で人生を添い遂げようとする姿、その悲惨な末路に背筋が凍ります。しかし星田一夫さん、チビの太めの眼鏡のおっさんと、ゲイ目線で見ればかなりのモテスジ、少なくとも私はモロイケです。ノンケでもマグロでいいから奉仕してあげたかった…と思うとマジで悲しくなってしまう自分が一番ヤバいかもしれません。
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文/サムソン高橋
画像/『外道の家』上巻(田亀源五郎/バディ)
初出/『実話BUNKA超タブー』2024年5月号