漫画好きの識者の方々に、思い入れのあるSEX描写を挙げてもらった!
PROFILE:
ロマン優光(ろまん・ゆうこう)
1972年生まれ。高知県出身。「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ロック・ユニット「プンクボイ」としても活動している。近著に『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』など。
X:@punkuboizz
『マタギ』のプロトタイプにあたる連作短編集
極論でいえば、SEXをSEXたらしめるのは挿入という行為であり、いかに変態的な前戯があろうと、挿入という行為自体は誰がやっても基本的に同じで代り映えがするようなものではない。
漫画における「とんでもないSEX描写」というものも、『やる気まんまん』(作画:横山まさみち、原作:牛次郎)のような描写自体に独自の手法がとられた例外的な成功例(霧隠サブローによる新作『新やる気まんまん 警視庁SEX捜査官』はSEXファイトという新たな概念を持ち込み、バトル漫画としても新しい局面を切り開いた快作だった)を除けば、SEXそれ自体の描写で他と極端な違いをつけることは困難であり、それがおかれたシチュエーションや行為の前後におかれた物語が重要になる。
『釣りキチ三平』で知られる矢口高雄の『マタギ列伝』。彼の『マタギ』は東北地方の伝統的な狩猟集団マタギの生き様を通して自然と人との関わりを描いた名作として知られているが、そのプロトタイプにあたる連作短編集であり、変なSEXシーンが度々登場する漫画でもある。
産後間もない妻と慎重に後背位で性交したことによって、熊の毛皮に傷をつけないように背後から熊の女性器に弾を撃ち込む技を身に付けたマタギ。
獲物に気付かれないように木に擬態する技の修行のため、師匠の性交を見続けさせられるマタギ。
非常に奇妙ではあるのだが、小池一夫原作劇画のウケ狙いの変なSEXなどとは違い、生真面目なトーンで描かれたそれは荘厳な気配すら漂っており、そのことでいっそう何とも言えない気持ちにさせられる。
