「おい杉作、おまえいくら持ってる?」
え、お金いるんですかねみたいなことを俺は言った。
「ただってわけにはいかんだろう。あの店は安くないんじゃないか……」
そう言って内藤さんは財布のなかを確認しはじめた。
石井さんはその頃もう亡くなられていたがなんていうのだろう、石井イズムとでも言おうか、いや、こうしたことをイズムとは呼ばんだろう……雰囲気? ムード? そこはかとない人間味? 内藤さんは石井さんに通じるなにかを確実に漂わせておられる。国道246沿いの歩道を歩きながら財布の中身を確認している内藤さんにそれを感じた。
映画『現代任侠史』のなかにも財布の中味を確認するシーンがある。
前回、『直撃地獄拳大逆転』で室田日出男が財布の中身を確認すると書いたが、『現代任侠史』では北村英三である。
わりと冒頭、銀座の寿司屋で和服姿の笑福亭仁鶴が数名の芸者衆をエスコートしている。なにたべてもいいよという言葉通りに高額な寿司を次々口に運ぶ芸者衆に囲まれて仁鶴師匠はタコとイカばかり食べている。以下次号。
※続きの記事はこちら。
「『現代任侠史』その3」
「『現代任侠史』その4」
「『現代任侠史』その5」
『現代任侠史』(1973年・東映京都)
出演/高倉健、梶芽衣子、笑福亭仁鶴、北村英三、青木卓司、田中邦衛、南利明、郷鍈治、成田三樹夫、中村英子、夏八木勲、沢彰謙、有川正治、北沢彪、川谷拓三、阿波地大輔、舟橋竜次、堀正夫、成瀬正孝、鈴木康弘、岩尾正隆、野口貴史、宮城幸生、島田秀雄、北川俊夫、友金敏郎、矢部義章、西山清孝、鳥巣哲生、森源太郎、木谷邦臣、土橋勇、高並功、福本清三、東竜子、丸平峰子、林三恵、笹木俊志、唐沢民賢、三益愛子、今井健二、内田朝雄、林彰太郎、小池朝雄、辰己柳太郎、安藤昇
企画/橋本慶一、日下部五朗、佐藤雅夫
脚本/橋本忍
撮影/古谷伸
照明/増田悦章
録音/溝口正義
美術/鈴木孝俊
助監督/皆川隆之
進行主任/俵坂孝宏
編集/宮本信太郎
擬斗/上野隆三
アームス・テクニカル・アドバイザー/トビー・門口、トビー・村添
音楽/木下忠司
監督/石井輝男
企画/橋本慶一、日下部五朗、佐藤雅夫
脚本/橋本忍
撮影/古谷伸
照明/増田悦章
録音/溝口正義
美術/鈴木孝俊
助監督/皆川隆之
進行主任/俵坂孝宏
編集/宮本信太郎
擬斗/上野隆三
アームス・テクニカル・アドバイザー/トビー・門口、トビー・村添
音楽/木下忠司
監督/石井輝男
<隔週金曜日掲載>
画像/『現代任侠史』DVDパッケージ
PROFILE:
杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
twitter:@OTOKONOHAKABA