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「反ワクチン」など陰謀論を唱える政治家に対してどう対処すべきか米山隆一が思うこと

社会
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それでも「財務省陰謀論」のほうは、国民に与える悪影響という意味では馬鹿にならないですし、党内外からの視線も冷たくなって望ましくないなりに、とはいえ、それを信じたからといって死ぬ訳ではないので、まだしも放置も可能と考えられなくもないのですが、「ワクチン陰謀論」に至っては、それを信じた人がワクチンを打たないと実際病気になって最悪死に至りかねない上、そういう人が増えると、ワクチンの効果が100%ではない以上、ワクチンを打たなかった人にも累が及び、大きな公衆衛生上の問題を惹起しかねないので、これを放置するのは流石に公党としても、一政治家としても、一医師としてもどうなんだろうという葛藤が生じることになります。

国政政党は党内で陰謀論への対応をどうすべきか

では、こういう方に直ちに党もしくは個人として対処できるかというと、恐縮ながらそれはそう一筋縄ではいきません。まずもって、自由主義社会において基本個々の思想、信条、言論、表現は自由であり、最大限尊重されるべきもので、その自由を制限するのには極めて慎重であるべきです。

それに加えて、前述したとおり、党内には極端な陰謀論者から、私のような科学・論理好きまで非常に幅広いグラデーションがあり、「非科学的・非論理的主張」も、財務省陰謀論やワクチン陰謀論から、夫婦同姓原理主義、更には血液型占いや雨男・晴女話に至るまで非常に幅があるので、一体どこで線を引いたらいいのかを決めるのは簡単ではなく、同じ非科学的・非論理的主張に対しても、感じ方は人それぞれだからです。

その結果現時点では、立憲民主党に限らず恐らくどの党でも、私のように葛藤を覚える個人が個人的に発信するにとどまり、組織的な対応はできていないのが実情であろうと思います。

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しかし、冒頭に記載した有名例にあるように、今や政治家の発信する陰謀論は、SNSを通じて世の中を駆け巡り、国全体の方向性に大きな影響を及ぼし、国民一人ひとりの生活を左右しかねない時代に入っています。

そろそろ私たちは、高い理想を掲げる国政政党として、「余りに極端に非科学的・非論理的で、かつ国民の福利厚生に多大なマイナスの影響を与えかねない言説の発信」について、一定の組織的対応を可能とする規約(例えば従前の「倫理規定」に、「SNS発信規範」のような条項を設け、これに反した者に対して、適正な手続きの下に、一定の賞罰を与える)を設ける対応を検討すべき時に来ているのではないかと思います。

SNSの急激な進歩は、選挙の在り方のみならず、適正な政党のガバナンスの在り方も、また変えようとしています。

 

文/米山隆一
写真/flickr.comより(Author/U.S. Department of State)
初出/実話BUNKA超タブー2025年1月号

米山隆一

PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて旧新潟5区で初当選。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama

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