一体全体この減収分をどう手配するのかについて、国民民主党玉木代表は、税収の上振れや予算の使い残し、外為特会の剰余金などを挙げていますが、それらはいずれも既に次年度の予算に繰り入れられたり、国債の償還、発行抑制に使われたりしているもので、新たな恒久財源となるものではありません。
「減税をすると手元にお金が残って消費が増えて税収が増えるから大丈夫」という人もいますが、税金として徴税されたお金は元々政府が様々な用途に使っていたものなので、それが民間の手で消費されても、以前と比べて特に消費が増える訳ではなく、従って税収が大きく増えることもありません。要するに我々は、今8~22万円の減税額を受け取れるか、それとも7兆6000億円分の行政サービスが低下するか、若しくはその分の赤字国債を発行するかの3択を迫られているのです。
勿論目の前の8~22万円ものお金がほしくない人はいないでしょう。しかし、私たちがそのお金でBUNKAタブーを買えるのは、貴方も店員さんも義務教育を受けて文字が読め、コンビニまでの道路が舗装され、信号機が動き、仮に事故にあっても救急車で運ばれて一定の費用で治療してもらえ、コンビニに電気・ガス・水道が通り、更には道中他国が撃ち込んだミサイルがさく裂したりしないからに他なりません。
目の前の8~22万円のために、本当に日本からそのサービスが失われていいのか、また将来利息が付いた巨額の借金を返すことになったりしないのか、私たちはよくよく考えなければならないと思います。
文/米山隆一
初出/実話BUNKA超タブー2025年1月号
「103万円の壁」引き上げをほくそ笑む脱税インチキ個人事業主
宝くじの絶対当たらない仕組み
PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて旧新潟5区で初当選。当選2回。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama