「鴻海の劉会長は、2024年5月の株主総会で『日本の自動車メーカー2社と協業する見込みだ』と発言している。おそらくこの時すでに、日産・三菱と接触していたことがうかがえます」(吉野氏)
それから2カ月後の7月18日、トヨタ自動車の豊田章男会長による「日本で頑張ろうという気になれない。ジャパンラブの私が日本脱出を考えているのは本当に危ない」という発言は、多くの波紋と憶測を呼んだ。
「劉会長の発言に経産省や国土交通省が慌てたんだと思います。日産が海外企業となり、大事な天下り先のひとつを失う事態はなんとしても避けたかったんだろうと。それで、トヨタに日産を救済するように何らかのアクションを起こしたのではないでしょうか」(吉野氏)
その後、日産救済の提案を蹴られてメンツを潰された政府は、「検査不正」があったとしてトヨタとその系列会社を槍玉に上げ、マスコミはよく調べもせず国土交通省からの発表をそのまま記事にした。
「日本基準では衝突実験に11000kgのウェイトを乗せて実験を行えばいいところを、より安全性の高い海外基準クリアを目指して1800kgのウェイトで実験していたのに不正とされてしまうという、かなり頭のおかしい認定でした。さすがに豊田会長もボヤキたくもなるというものでしょう。長らく公明党利権が続く国土交通省は、中国BYDやEVバスの導入に力を入れていますから、トヨタを目の敵にしたのかなと。まったく、どこの国の省庁なんだかわかりませんよ」(吉野氏)
しかし、国交省の嫌がらせから除外された日産は、なぜかその後も業績が悪化し、株価が大きく下落。それを工場や販売網を格安で手に入れるチャンスだと判断した鴻海が、ルノーなどと株式取得の交渉を開始した。この動きを見て、またまた利権にしがみつきたいゲスな経産省が、鴻海による買収阻止のために、強引にホンダと日産の経営統合を画策した形なのだという。だが、そんな経産省の目論見も、「日産のエゴ」で吹き飛んでしまった。
この低レベルなバトルはさらに泥沼化し、株価にも大きく影響を及ぼしていく。