日産と鴻海の経営統合に対して、政府側(武藤容治経済産業大臣)は、『技術の国外流出には留意する必要がある』などとコメントをしましたが、EVに関しては全く的外れなコメントで、その懸念は皆無と言ってよいでしょう」
EVにおいてはテスラやBYDはおろか鴻海ですら、技術・生産能力とも、日産の力を大きく上回っているのだという。
「懸念すべきは、技術よりもデータの流出です。自動運転システムにより集積されたデータが盗まれる危険があります。技術力が低下し、現場の士気が下がっている現在の日産において、いちばん危ないのがセキュリティガバナンスの劣化でしょう」(大橋氏)
昨今の各社の先進運転支援システムは、日本の道路状況や検索の履歴、果てはドライバーの個人情報や体調に至るまで、ありとあらゆる情報が蓄積されており、これらが悪意ある国家や団体などによって、スパイ活動や監視活動に使用されたらたまったものではない。
吉野氏も日産の末期症状を冷静に分析する。
「『日産には内部留保があるからあと5年は大丈夫』などと楽観視しているのは日産役員だけ。車のブランドというのはイメージが大事ですから、ここまで印象が悪くなったらもう単独再建の未来は閉ざされたと言っていいでしょう。日本国内の自動車産業は、再編待ったなしです」
かつてグローバル展開を試みたマツダは、当時の円高による経営危機により、フォードとの提携を解消すると、すぐさま規模を縮小/整理し、品質重視の少数モデル展開へと舵を切り、健全な販売体制とコアなファン層を獲得し、復活するに至った。株式発行数こそ少なくて、時価総額は日産よりも低いものの、株価は1000円台と日産の3倍近く、会社の信用度ランクも高い。
「もはやゴーンのいない日産の企業体質では、マツダのような臨機応変なファイトスタイルの変更は無理でしょうね。現在の縮小した事業規模を直視できない日産は、大企業・グローバル病に蝕まれすぎています。今の日産がグローバルなのは、役員の国籍と使ってない工場だけですから(笑)」(大橋氏)
先日発表された2025〜26年に登場を予告した30車種のうち、多くが三菱やルノー、東風のOEM。これらが株主騙しの時間稼ぎのフェイクだとしても、他社に頼りすぎだろう。アライアンスが切れたらそこで突然死の可能性すらある。
「やっちゃえ」と言う割には、その度量も資金もないのが今の日産と言えるようだ。