大橋氏によると、日産は役員こそ外部からの人間が多いものの、一般社員の中途採用の人たちは出世しづらい社風にあるという。転職組の大橋さん自身も、一流大学を卒業し数々のプロジェクトリーダーを任されるも、重職に昇進したのは50歳を過ぎてからだとか。
「普通なら40代、社内政治に長けた人なら30代での昇進もあるんですけどね(笑) 。でも、私はまだいいほう。かつては『プリンス自動車(日産が吸収合併したメーカー)出身の人らは永遠に出世できない』というステルスパワハラも実在しました。最近は鴻海に買収されそうなムーブですけど、これからは第三者として事の推移を見守るのが精神衛生上いいかなと思ったのも、辞める原因の1つです。内部に居座って全てを受け止めるには、マインドや給料と相殺してみてもちょっと割に合わないという結論に至りました」(大橋氏)
トヨタの不正事案を操った政府
台湾企業の鴻海と言えば、売り上げ高の7割を中国製造の製品が占める中国依存の企業というイメージが強い。とはいえ、同様の企業は自動車メーカーをはじめ日本にも多く存在しており、数字だけを見て一概に中国寄りと断言するのは多少乱暴だろう。
同社は1974年の創業以来、iPhoneなどの受託生産で業績を伸ばしたものの、スマホ界隈の頭打ち現象などで受託生産ビジネスの成長に陰りが見え始めたことから、自社製EVの生産を始めるなど、次世代の基幹事業を模索している真っ最中だ。
鴻海は今までアメリカの複数のEVベンチャーグループに出資していたものの、昨年から現在にかけ、うち2社が破産申請するなど、受託生産もあまり増えていない現状だ。しかし、ここから昨今の日本の不自然な自動車業界の動きとの、点と点がつながり始める。
話を進めるために、元大手通信社勤務で、「日産と経産省で既に有事後のストーリーはできている」と分析する吉野氏(仮名・61歳)の意見も加えていく。