第8回 頂き女子りりちゃん
私はこの連載のネタ、というか世の中の森羅万象を、あらゆる情報と感情の下水道旧ツイッターことXという仮想現実から主に摂取しているのだが、最近はLGBTQよりも、キャバ嬢や風俗嬢やホストや弱者男性やパパ活おじについてばかり詳しくなってしまって困っている。
Xという下水道から最近はそういう汚水しか流れてこないのだ。
おそらく頂き女子りりちゃんのマニュアルが流出したことと、痛ましい西新宿タワマンストーカー殺人事件が起こったためだと思われる。
ゲイ関連で最近話題となった出来事といえば、以前よりXにて陽キャゲイを晒して陰口を叩いていた人物が垢バレしてしまい、ゲイアプリでこっそり載せてた陰茎画像が拡散されてしまったという出来事くらいで、個人的には面白いのだが小物すぎて一般的なバリューには著しく欠ける。りりちゃんの存在価値に対してのナノグラム分も無いだろう。
逮捕当初からわりかしりりちゃんは一目置かれていたような気がするが、マニュアルが流出してさらに人としての価値が高まったのではないだろうか。
他人に向けてマニュアル作成をするというのは、かなりの知性と文章力と人に対しての解像度がないと無理なのだが、それを高いレベルで成し遂げている。おじに対して搾取するだけではなく、幻想という名の施しも積極的にしているので、犯罪書なのに読んだ後も意外と後味が悪くない。マニュアルのキモは端的に言って「誠実で無知な女を演じる」ということであり、それに騙される男はいかにも馬鹿で自業自得という感じがある。最後の締めが「お金は誰にも必要ないです」というひとことで、おそらく自分が犯した罪を心の中で軽くする無意識が発した言葉だと思うが、詐欺犯罪の結論がこれだと一気にロシア文学の世界へ叩き込まれた気分になってしまい、味わい深いにもほどがある。